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20日間のシンデレラ 最終話 私の本当の気持ち…

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対照的にその清水の言葉を聞いて自然とクールダウンしていく陸。

陸の体を抑えながら、

米 川  「陸……」

お互いの真ん中に割って入る花梨。

花 梨  「もうやめて! あんた達、親友なんでしょ!!」

花梨の悲痛な叫びが教室に響く。

花 梨(語り)「どうして……何でこんな事になるの……こんなのあの二人じゃない……いつも仲が良かったあの二人じゃないよ!」

清水を抑える前田の手を振りほどき、陸を睨み付けながら、

清 水  「お前は一体、誰なんだよ」

花 梨(語り)「……時間が止まった気がした……清水のその言葉は現実から目を背けようとする私を捕まえて離さなかった…………もう……訳がわからない……」

          ×           ×           ×

                         
〇舞台(回想)


  陸  「僕はあなたを愛しています」

変わらず会場に流れている沈黙。

陸の台詞が返ってきてほっと安心している花梨。    

  陸  「今も……そして十年後も……ずっと…………」

花 梨  「えっ……」

驚き思わず口に出てしまう花梨。

突然、会場がざわざわと騒がしくなる。

花 梨(語り)「正直……うれしかった……こんな言葉を私はずっと待っていたのかもしれない……けど…………」

  陸  「帰らなければいけないと言いましたね? 実は僕もそうです……ある人と約束をしました……こんなにもすばらしい時間をまだ終わらせたくありません…………だけど時間は残酷にも進み……僕を元の世界へと連れ戻そうとするのです…………」

何も言わず、ただ視線を下に向けている花梨。

  陸  「…………何も言わないのですね……」

恐る恐る陸の方を見る花梨。

花 梨  「怖いんです……これは夢で冷めてしまうのではないかと思うと……」

へなへなとその場に崩れこむ花梨。

花 梨(語り)「もうやめて……全部嘘だよね? みんなを騙してるんだよね? ねぇ陸……嘘だって言ってよ…………」

 陸  「…………」

言葉を失う陸。

突然の出来事に、舞台を見ている全ての人が驚き、固まっている。

花 梨  「けど何より……それと同じぐらい……あなたが…………怖い……」

花梨の目から大粒の涙が流れる。

花 梨(語り)「私は…………誰を好きになったの?」  
      
花 梨  「うわぁぁぁぁぁぁあっ!!」

          ×           ×           ×          


〇東京 一人暮らしの花梨の家(2010年 同窓会二ヶ月前)  


降り続ける雨。

風も次第に強くなりベランダの外はいつの間にか嵐のような光景になっている。

ずっとその前に突っ立って外を眺めている花梨。

目からは涙が流れている。

ゆっくりとその目を閉じる花梨。


〇教室(回想)


  陸  「か……花梨……頑張れよ……」

花 梨  「……」

下を向いたまま無表情の花梨。

花 梨(語り)「…………やめて……」

  陸  「お前だったらさ……その……誰とでも仲良くなれるし絶対上手くいくよ……」

無理やりに笑顔を作る陸。

花 梨  「……」

下を向いたまま無表情の花梨。

花 梨(語り)「……いつもの…………陸でいてよ……」

  陸  「お……俺のこと忘れないでくれよな……」

さっと手を差し出し、花梨に握手を求める陸。

花 梨  「……」

下を向いたまま無表情の花梨。 

手を差し出さず時間が止まったように固まっている。

花 梨(語り)「どうしてだろう……怖かったのももちろんあったけど……このまま握手をしてしまえば微かな希望も全部失って……私が陸を好きだったって事もなかった事になるんじゃないかって…………それが嫌で……やっぱり怖くて…………お別れなのに…………握手……できなかった……」

   
〇東京 一人暮らしの花梨の家(2010年 同窓会二ヶ月前)  


未だにベランダの前に突っ立っている花梨。

突然、カタンと玄関のドアから音が聞こえる。

ポストの中には一枚のはがきが。

大きな文字で、

(同窓会のお知らせ)

そして差出人の名前は、

(出雲 陸)

と書かれている。

          ×           ×           ×

いつの間にか激しかった雨もほとんど止んで、ベランダからはほんのりと光りが差し込んでいる。

ベッドにうつ伏せになりながらケータイで話をしている花梨。

花 梨  「久しぶり、元気してた?」
      
ケータイから聞こえてくる声。

夏美の声 「それはこっちが言いたいわよ! 花梨、そっちは大丈夫なの? 一人でちゃんとやれてる?」

花 梨  「大丈夫だって、そろそろ慣れてきたかなってカンジ」

夏美の声 「痴漢とかにあったらすぐに警察に連絡するんだよ。 って花梨だったらその心配はないか」

笑いながら話す花梨。 

花 梨  「どういう意味? これでもあの頃よりは女らしくなったつもりよ」

電話の向こうから夏美の笑い声も聞こえてくる。

少し落ち着いて、再び話を切り出す夏美。

夏美の声 「あっ! そうだ花梨、こないだタイムカプセル開けたんだよ、六年四組の!」

花 梨  「いいなぁーそっか……私も五年で転校しなかったらタイムカプセル埋めれたのか……」

夏美の声 「思ったよりみんな集まってくれてさー懐かしかったよ」

急に無言になる花梨。

夏美の声 「ん? 花梨どした?」

花 梨  「り……陸は来てたの?」

んーと困った声を出している夏美。

夏美の声  「あれ? 陸って……出雲だよね? えっと……来てたような来てなかったような……ごめん……何か思い出せないや……」

花 梨  「そっか……」

はーっとベッドの上をごろごろしながら深いため息をつく花梨。

花 梨  「……夏美、陸から同窓会のはがき届いた?」

夏美の声  「あっ! 届いた届いた! まさか出雲から声がかかるとはね……学芸会の事とかもあったしまだ気にしてるんじゃないかなとか思ってたから、ほんとびっくりしたよ」

花 梨  「同窓会……行く?」

夏美の声  「行こっかな……子供は説明すれば一日ぐらいは親が面倒みてくれると思うし……みんなでお酒飲める年にもなったしね」

花 梨  「酒飲み」

夏美の声  「ほっとけ」

笑顔になる花梨。

夏美の声  「それより花梨はどうすんのよ?」

花 梨  「私は……どうしよっかな……」

夏美の声  「仕事は?」

花 梨  「まだ先だし多分、何とか……」

夏美の声  「じゃあ来なって、イダセンも来るみたいだしさ。 それにどうせ他にも目的あるんでしょ?」

電話の向こうから夏美のいじわるそうな声が聞こえてくる。

思わずびっくりする花梨。

優しい笑顔で、

花 梨  「ははは……夏美には敵わないな……」

夏美の声  「あったりまえじゃん! それより聞いてよーこないだ清水にあってさー……」


〇東京 一人暮らしの花梨の家 玄関前(同窓会 当日)