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20日間のシンデレラ 最終話 私の本当の気持ち…

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  陸  「たった2点しか変わらねぇじゃん……ったく分かったよ……」

花 梨  「陸は将来の夢とかってあるの?」

  陸  「俺は特にないな……花梨は? そんな事よりも早く給食を食べたい」

花 梨  「私はね、お花屋さん。 ほらっ花梨って名前には花って文字が入ってるし、なんか女の子っぽいでしょ?」

急に笑い出す陸。

  陸  「はっはっはっ……お前が花屋って似合わねぇよ。 そんな事よりも早く給食を食べたい」

花 梨  「似合うわよ! その内、びっくりするぐらいおしとやかな大人の女性になってやるんだからっ」
      
  陸  「無理、無理。 そんな事よりも早く給食を食べたい」

じーっと陸を見つめる花梨。

  陸  「……何だよ? そんな事よりも早く給食を食べたい」

急に怒り出す花梨。

花 梨  「あんた人の話、聞く気あんの!!」

  陸  「お前がやれって言ったんだろ!! そんな事よりも早く給食を食べたい」

よく分からない喧嘩が繰り広げられる。

ボールを持って陸に声をかける清水。

清 水  「陸ードッヂやろうぜ!」

  陸  「おお! そんな事よりも早く給食を食べたい」

清 水  「って事はやらないんだな?」

  陸  「え?」

花 梨(語り)「陸と過ごす時間は本当に楽しかった……毎日学校に行くのが楽しみで家に帰っても早く明日になってほしくて仕方がなかった。 というよりただ単に陸と話したかったんだ……私は知らずの内にどんどん陸に惹かれていったんだと思う……」


〇教室 休み時間(回想)


自分の机に座っている花梨。

隣には陸の姿がない。

きょろきょろ辺りを見渡して明らかに挙動不審な花梨。

自分の机を少しずつ動かして陸の机との距離を近づけている。

急に花梨の背後から陸がやってくる。

  陸  「何やってんだよ、お前?」

びくっとなって焦る花梨。

花 梨  「あははっ、何でもないあるよー少年」

  陸  「キャラ壊れてるぞ……何かいたずらしてんじゃないだろうな?」

花 梨  「だから何もないって言ってるでしょ、この馬鹿」

  陸  「馬鹿はお前だ、馬鹿」

      
〇運動場(回想)


がやがやと騒がしい運動場。

お互いの担任が見守る中、五年四組の男子と五年二組の男子がドッジボール大会の試合をしている。

四組の内野には陸ただ一人。

二組の内野にはまだ三人残っている。

その様子を心配そうに見ている生徒達。

花梨に声をかける夏美。

夏 美  「やばっ! 陸だけとか二組に負けちゃうよ」

真剣な表情で答える花梨。

花 梨  「大丈夫だよ」

激しい攻防が繰り広げられる。

絶対絶命と思われていたものの、次々と相手チームを倒していく陸。

外野からの攻撃も全て受けとめ遂に最後の一人にシュートを決める。

沈黙。

笛を大きく鳴らすイダセン。

手を四組の方に向けて、

イダセン 「ゲームセット。 四組の勝ちー」

その瞬間、大きな歓声に包まれる。

飛び跳ねるように清水とハイタッチをする陸。

そして四組の他の生徒達も陸の元に集まってくる。

もみくちゃにされながら喜んでいる陸。

その様子を嬉しそうに眺めている花梨。

呆気にとられている夏美に笑顔で、

花 梨  「ねっ?」

花 梨(語り)「馬鹿な陸が好きだった……真っ直ぐで不器用な陸が好きだった……普段は生意気だけど不意に見せる笑顔が可愛くて……格好良くて……陸は私の事どう思ってるんだろうって……そればかり気になって夜も眠れなかった……なのに……」


〇花梨の部屋(回想)


ばたんっとドアを閉めて部屋に入る花梨。

電気も点けずにその場に突っ立っている。

曇った表情。

力がぬけたようにベッドに飛び込む。

体を震わせている花梨。

そして声をあげてわんわん泣き始める。

花 梨(語り)「父さんの新しい仕事が決まった……それはいい事だ……喜んでいる父さんの顔を見ると私もうれしい……けど……けどっ! 転校だなんて…………あとたった一ヶ月で陸と会えなくなるなんて……私はどうすればいいの? どうする事もできないの? 当時の私にとって転校という言葉はあまりにも重くて残酷で……その夜、不安と悲しさとただ強くなり続ける陸への思いに…………私は泣いた……」


〇東京 一人暮らしの花梨の家(2010年 同窓会二ヶ月前)    

 
文集を読みふけている花梨。

ふいにベランダの方を見る。

花 梨  「雨……」

いつの間にか外は強めの雨が降っている。

遠くの方で一瞬ぴかっと光り、その後地響きのように雷の音が聞こえてくる。

ゆっくりと立ち上がる花梨。

はーっと深いため息をつき、寂しそうな目をベランダの外に向けている。

花 梨(語り)「いつ頃からだろう…………陸が別人に思えたのは……」


〇教室 休み時間(回想)


花 梨  「ファービーだってさ陸! やばいってー絶対可愛いよーいこいこっ」

ぶんぶん体を揺さぶられ目を回している陸。

  陸  「いや……俺はいいよ。 花梨行ってこいよ」

陸を揺さぶる手が止まる。

花 梨  「あ……うん……」

少し寂しそうな顔をして米川の元に駆けていく花梨。

花 梨(語り)「陸といつものように馬鹿騒ぎができなくなっていった……何だろう? 話しかけても反応が薄いっていうか……それにいつ見ても思いつめたような難しい顔をしてるし……私、何か陸にひどい事、言ったのかな? 急に陸との間に壁ができたような気がする……私はあと一ヶ月しかこの教室にいられない……だから余計に……寂しかった…………」 

          ×           ×           ×


〇教室 授業中(回想)


前 田  「すげぇ……」 

一番前に座っていた前田がぼそっと一言。

それをきっかけに我に帰る陸。

周りを見渡すとみんな不思議な顔をしている。

その意味が全くわからない陸。

イダセンまでもが驚いた顔をして、

イダセン 「……どうしたんだ出雲、変なものでも食ったか?」

そう言いながら黒板の前に立つイダセン。

赤のチョークを持ち陸の答えに大きく丸をうつ。

その瞬間、教室で歓声が上がり沢山の拍手が沸き起こる。

花 梨(語り)「ありえない……こんな問題……あの陸に解けるわけない……」                   
                 
清 水  「なぁ、どう思う花梨? 陸が神だぞ」

ははっと笑って、

花 梨  「何よ神って。 陸は陸じゃん」

花 梨(語り)「怖かった……段々、陸が私の知らないどこか遠い所に行ってしまう様な気がして……だから私は自分に言い聞かせていた…………陸は陸なんだ……」

           ×           ×           ×


〇教室(回想)


瞬間的に清水を前田が陸を米川が、必死にその体を抑える。

清 水  「離せっ前田! こんな奴、陸でも何でもねぇ!!」

前 田  「落ち着けって清水!」