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シモバシラ

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元同僚の、2歳上のMさんから久しぶりに電話があった。それ以前の電話は、十年ぶりくらい前だったろうか。その時、彼女は「私もおばあちゃんになってしまったよう」と言っていたことを覚えている。そして、もう何十年も会ってないことを両方で確認したのだった。ということは、彼女はおばあちゃんになってから10年経つのか、と私はその顔を想像してみようとするが、なかなか難しい。

Mさんは、一緒に働いていた時の顔しか覚えていない。それぞれ自分の家族のことが重要で今まで会ってなかったし、Mさんが東京から埼玉県に引っ越したことも理由だった。そのMさんがどういうルートかは知らないが、私が妻と死別したことを知って電話をしてきたのだった。

だから、久しぶりに会うことになった時も、顔がわかるだろうかという心配があった。Mさんは「大丈夫、見たらわかるよ」と言った。まあ、昔と違って今は携帯電話を各自が持っている時代だ。携帯の番号は交換し終えている。


初めて降りる駅の改札を出て、すぐに「Sさーん」という声が聞こえた。あ、この声は覚えている。私はそう思った。そしてMさんのその顔は、ありゃあ……と思うほど変わっていないではないか。

「かわってないー」と言う私の言葉に、Mさんは嬉しそうに私を見る。幾分憐憫の表情を浮かべたのは私の頭髪に対してかもしれない。優越感の表情も見えるのは、自分の容姿に対してだろう。昔、知っていた頃の彼女は、化粧で美人に見えるというタイプだったから。それが今、おばあちゃんになっているのに、不思議なほどにスッピンに近く奇麗だった。

作品名:シモバシラ 作家名:伊達梁川