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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第十一回・参】ちもきのぽぽんた

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緊那羅の笛の音に流れるように乗って吉祥の手足が咲く
「…コレ金とれるよな…」
坂田が言うと南と京助が頷いた
「ヨシコの舞いは一品なんきに…綺麗だろ?」
阿修羅が笑って言う
ありすも南の隣で吉祥の動きに魅入っているようでただじっと見ていた
黄色い花の中で布を靡かせ吉祥の体がしなやかに笛の音に流れるのを一同はただ黙ってみていた


「代わるか?」
「うんにゃいーよ」
京助が南に聞くと南が笑顔で断った
「疲れたんでしょうね…悠助もその子も」
乾闥婆がチラッと振り返った先には慧喜の背中で寝こけている悠助
「はっちゃけてたもんなぁ…よっぽど楽しかったんだろな」
坂田がハッハと笑った
「…何よ」
「…別に…」
チラッと横目で吉祥を見た中島に吉祥が聞く
「…踊り上手いんだなお前」
中島がボソッと言うと吉祥が足を止めた
「え…?」
少し驚いた顔を吉祥が上げると中島がスタスタと足早に前を歩いていく
「な…に…よ」
呟くように言いながら吉祥も数歩足を進めてまた止まる
「なんなのよ…っ」
そしてまた一人で呟くように言うと指に巻きつけられたしおれかけのタンポポに目をやる
「知ってる?」
「!!?;」
本間がいきなり声をかけたのに驚いた吉祥が思わず構えた
「…香奈;」
阿部が溜息をつく
「こっちではね左手の薬指にする指輪には理由があるんだよ?」
「薬指?」
吉祥が本間の言葉に自分の左中指を見た
「エンゲージリング」
本間が吉祥の右中指にしてあったタンポポを突付きながら言う
「えん…?」
「結婚するときにこの指に指輪をすんの」
今度は吉祥の左薬指を本間が突付いた
「好きな相手からこの指に指輪をはめてもらうの」
「好きな…相手?」
吉祥が自分の左薬指を見た
「そう幸せの指輪」
にっこり笑って頷くと本間が足早に吉祥を追い越して歩いて行く
「…幸せの…」
吉祥がタンポポの付いた右中指と何も付いていない左薬指を見た
「アナタは京助からもらいたい?」
「はっ!!!?;」
いきなり振られた阿部が声を上げた
「好きなんでしょ? なら欲しい?」
「だ…っ;あ……ま…;」
率直に聞く吉祥に阿部が慌てる
「アタシは…;」
「アナタ可愛いわ」
慌てる阿部を見て吉祥が微笑んだ
「…どうしてゆーちゃんはこの指を選んだのかしら…」
タンポポの付いた右手越しに吉祥が中島の背中を見た

駅の前に立つ人影がありすの母親だと気づいた一同が少し進む速さを上げた
「遅くなってスンマセン;」
南が少し疲れた顔で笑顔を作って言う
「いいのよ」
ありすの母親が南に笑顔を向けそれから京助達をみて軽く頭を下げた
「もう来られないかもしれないんだから」
「え…?」
南の背中で眠るありすの頭を撫でながらありすの母親が言うと南が大きな目を更に大きく見開いた
「離婚が成立したの…だからもうこの町に来る理由がないの」
ありすの母親がありすを南の背中から抱き上げながら言う
「私は元々この町の人間じゃないしね…親権は私が貰ったから」
母親の腕の中でうっすらとありすが目を開けた
「じゃ…あ…もうありすは…」
南の声を聞いたありすが南を見てそして手を伸ばす
「駄目よありす…この電車に乗らないと今日は帰れなくなるんだから」
母親の言葉にありすがぶんぶんと首を振って母親の腕から抜け出し南の後ろに隠れた
「こら! ありす!!」
母親が手を伸ばしてありすの肩を掴む
「あのっ…!!」
その母親の手に南が手を添えて母親を見た
「あの…今日一日…って言いましたよね俺…まだ今日…ですよね?」
南がありすを見ると南の服をありすがキュッと握ったまま南を見上げていた
「だから…」
ありすの頭に手を置いた南が母親を見た
「…今日一日…ありすを…」
真っ直ぐ自分を見る南から目をそらせなかった母親が溜息をついた
「…しょうがないわね…明日始発で行くからね?」
そして負けたわというカンジの苦笑いでありすの頭を撫でた