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88.警察官川島



祭りの夕闇。

行きかう人々は、内なる熱気を好き勝手に空へと放散している。

それはもう、地球温暖化などおかまいなしというほどに。

そんな中、俺一人だけが内なる熱気を放散することができず、悶々とした熱を、ただこの身に溜めることしかできなかった。



 結局、俺はハルカちゃんと田中敬一のデートが気になり、商店街の祭りに来てしまった。はぁ……、情けない。俺はこんなちっぽけな体一つ、コントロールできないなんて。

 俺はそんなことを考えながら、まるで野獣のように青春を熱気に変えて、その熱エネルギーでうごめく群衆の中を歩いていた。

 商店街の小さな祭りとはいえ、この狭い空間に千を超える人々が集まっている。これほどの人の中から、ハルカちゃんを見つけることができるだろうか? 別に見つけたところで何があるわけでもない。むしろ、見つけないほうが俺にとって良いことなのだろう……

 俺はそんなくだらないことを考えながら人波を漂っていたが、数秒後、その考えは杞憂に終わった。

「あ……」

 人波を外れて一人、木の下でたたずむ浴衣姿の美しい女性。俺は一目でそれがハルカちゃんだと認識し、その瞬間周りの景色は消え落ちた。そして、ハルカちゃんだけが俺の瞳に残った。