カシューナッツはお好きでしょうか?
89.カエデ
夜の空。
星達が自己主張合戦を繰り広げる。
どの星も、かなしいくらい輝いていて、うらやましかった。
今日は祭り。
熱気の集い。
そんな熱気の正体は、夢か青春かはたまた幻か。
唯一つ自信を持って言えるのは、今この瞬間、最も激しく熱気を放っているのは、この私。
無尽蔵に吐き出される私の熱気は、人の心に火をつける。
そして、心の燃えた人々は、まるで蒸気機関車のようにさらなる熱気を発散する。
発散された熱気は、一人では寂しいらしく、寄り添い、かたまり、まるで孤独な人々のようにモクモクと世界に広がる。
そして、地球という大きな箱に充満した熱気は大気圏を突破し、宇宙の果てへと到達する。
その瞬間、私は宇宙と一つになる。
当然、宇宙と一体化した私に怖いものなどあるはずもなく、あるのは満ち溢れる自信と熱気、そして少しのドキドキだけ。
さぁ、行こう!
あのステージの向こうに。
私はそんなことを考えながら、ステージに続く階段を駆け上がったのだけれど、このとき、左手で強く握り締めたマイクだけが小刻みに震えていたことに、私自身気付いていなかった。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ