カシューナッツはお好きでしょうか?
77.ふけさん
『カエデちゃんの住所わかったぞ。○×町3丁目にある一軒家にすんでいるそうだ。そこにカエデちゃんがいるかどうかわからんが、行ってみるといい』
私は川島くんからのこのメールを見て直ぐに、家を飛び出した。そして、タクシーをつかまえて、急いでカエデさんの家に向かった。
カエデさんには、言ってやりたいことが山ほどある。
“何で私に断りなく、いなくなったんだ!”
“何で連絡の一つもよこさないんだ!”
“心配したんだぞ!”
“君は一人でアイドルをやっているんじゃないぞ!”
“いろんな人の力を借りていることを忘れるな!”
次々と浮かんでくる言葉。この言葉達を、怒りにも似たこの感情に乗せてぶちまけてやろう!
私がそんなことを考えているうちに、タクシーはカエデさんの家の前に到着した。
「ピンポーン!」
「…………」
タクシーから降りて直ぐ、カエデさんの家のチャイムを鳴らしてみたが、反応はない。留守なのだろうか?
「ピンポーン! ピンポーンピンポーン!」
「カエデさん! いるなら返事して!」
何回もチャイムを鳴らしたが、相変わらず反応はない。やはり、今は誰もいないのだろうか?
私はそんなことを思いながら、試しにドアノブを回してみた。すると、すんなりと回った。どうやら鍵は開いているらしい……。
「おじゃまします……」
私は忍び足で家の中へと潜入した。これはいわゆる“不法侵入”というやつだが、仕方がない。カエデさんのアイドルデビューの夢を叶えるために、“法”には少し目を瞑ってもらおう。
家の中はいたって普通だった。どこにでもある中流階級の家を想像してもらえれば、大体あっているだろう。
「カエデさーん? どこにいるの?」
私はとりあえず2階から探そうと思い、階段を上った。
「……ここか」
階段を上って直ぐの部屋の扉に『カエデ』という表札がぶら下がっているのが見えた。
【ふけさん……ごめん】
さらに、扉の向こうから、ボソボソとしたしゃべり声も聞こえた。その瞬間、私はカエデさんがこの部屋にいることを確信し、それと同時に感情が昂ぶった。
「カエデさん! 何でいなくなったの!!」
私は昂ぶった感情に任せて、カエデさんがいるであろう部屋のドアを勢いよく開けた。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ