カシューナッツはお好きでしょうか?
74.ハルカ
「ハルカさん、この前は本当にすいませんでした!!」
私が席に着いた瞬間、川島さんはすごい勢いで謝ってきた。
「本当にすいません。わざわざ忙しい仕事の合間に、ランチに誘っていただいたのに……。しかも、ランチの直前に断りの連絡をしてしまい、ほんとうにごめんなさい。ほんとうならもっとはやくに連絡をするべきだったのですが、ほんとに急な用ができてしまったので……」
「いえいえ、私は気にしていませんので、頭をあげてください。急用では、仕方ありません」
「でも……」
前回のランチを急用で断ったことに罪悪感を持っているらしく、川島さんは私がなだめても、中々顔を上げてくれなかった。
「ほら、いいかげん顔を上げて! おいしいパスタを食べましょう。ね?」
私は少し、川島さんの“急用”の詳細が気になったが、あえて聞かなかった。それよりも、今日は聞きたいことがたくさんある。今日も仕事の合間に時間を作って来たから、あまり長居できる時間はない。とにかく、川島さんをはやくなだめて、社長さんの情報をたくさん入手しなければ!
そう思った私は、川島さんの罪悪感を和らげる内容の話をした。
「そうだ! 聞いてください。実は川島さんが、急用で来られなくなったおかげで、私に新しい友達ができたんですよ。“カエデ”さんという、アイドルを目指している女の子なんですけど……」
「え!? カエデ!!」
私の“カエデ”という言葉に、先ほどまで頭を下げていた川島さんが急に反応した。私はあまりに急な川島さんの反応に驚き、唖然とした。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ