カシューナッツはお好きでしょうか?
62.カエデ
【タイトル:地獄の愛は煮えたぎる
私の心は真っ暗で まるで暗黒豆腐の様
あなたのせいよ わかっているの?
もういいわ 死んで頂戴 地獄へ落ちろ
go to hell go to hell
地獄の業火で豆腐を茹でろ
go to hell go to hell
おいしい湯豆腐召し上がれ
マグマの池で頭を冷やしたら 地獄の花を摘んできて
それで許してあげるから 必死になればできるでしょ?
go to hell go to hell
もっと必死に愛しなさい
go to hell go to hell
軽い愛は欲しくないの
地獄より熱い愛で 私を抱きしめて
あなたの腕の中 溶けてしまいたいの
それだけが望み それだけでいい
だから 私を愛しなさい
go to hell go to hell
地獄の業火で豆腐を茹でろ
go to hell go to hell
おいしい湯豆腐召し上がれ
私の心は真っ暗で まるで暗黒豆腐の様
それを照らせるのは あなただけ
それだけは わかっていてね チュ!(投げキッス)】
私は感情の赴くままに、この歌詞を完成させた。
……おかしい、私がここ数日間で学んだことや感じたことを表現しようと思ったのに、なんかよくわからんヘンテコリンな歌詞が出来てしまった……。
「やっぱり、“気持ち”というものを文章で表現するのは難しいや。せっかく、この気持ちを伝えることができれば、人の心打つことができると思ったのに。人々を魅了することができると思ったのに……うまく文章にできないや」
私はそんな独り言を呟いた。
それもそうだ、たかが数日でスバラシイ歌詞を書けるようになるのであれば、だれでもプロになれる。正解がわかっても、それを表現できる技術がなければ意味がない。やっぱり、私にこの曲にあう歌詞を書くのは無理だ。
私はそう思った。そして、いつもならここであきらめていたと思う。けれど、今の私は前とは違う。
「……でも、私はアイドルだ。足りない分は歌やダンスで表現すればいい」
もし仮に、文字だけで全てを表現できるなら小説家になればいい。でも、私が目指すのはアイドルだ。アイドルは歌詞だけじゃなくて、歌声やダンスでいろんなことを表現する職業だ。だから私はもう、スバラシイ歌詞が書けないことを嘆くのはやめる! 歌詞だけじゃ足りない分を、歌とダンスでおぎなってみせる!
それが、プロのアイドルだと思うから。創り手が表現できない部分を変わりに表現する。それがアイドルという仕事なんだ。
「ぐるるるる……」
突如、腹がなった。あまりに集中していたため、夕飯を食べ損ねていたことに、今気がついた。
「歌とダンスの練習がんばろう」
私はそう思いながら、腹いっぱい飯を食った。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ