カシューナッツはお好きでしょうか?
60.カエデ
『“謝罪”は“告白”と同じです。
過去の状況に戻し、何事もなかったことにしようという、後ろめたい行為ではありません。自分の望む未来を掴むための、勇気ある行為です。変化を恐れず、好きな人に告白する様な気持ちで、謝罪してみてください。では、健闘を祈ります』
豆腐屋『白角』の店長さんとの関係も良くなり、楽しく店長さんと雑談しているときに、ふけさんからメールが届いた。その内容は、謝罪に関する私へのアドバイスだった。
……遅いよ! もう謝罪し終わったっつーの!
私はタイミングの悪いふけさんに対して、怒りと感謝を込めてメールの返信をした。
「さてと、私そろそろ帰りますね」
そして、帰り支度をした。
「もう帰るのかえ?」
店長さんは名残惜しそうな顔をしていた。
「すいません。私、なんだか今とても良い”気持ち”なんです。この”気持ち”を文字にすれば、きっといい歌詞が書けると思うんです。だから、この”気持ち”が冷めないうちに、家に帰って歌詞を書きたいと思います」
「そうかえ、良い歌詞が書けるとええね。それじゃ、お土産に『暗黒豆腐』を持っていきなさい」
「けっこうです」
私は冷徹な態度でお土産を断り、直ぐに豆腐屋『白角』から出た。
「デビューライブ、楽しみにしてるでね」
店長さんは悲しい目で私のこと見送ってくれた。
家について直ぐ、私は机に向かい、歌詞を書いた。ここ数日間で私が学んだこと、気付いたこと、思ったこと、失敗したこと、すべてを込めよう。
私はそう思いながら、時が経つのも忘れるほど集中した。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ