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54.警察官川島



「遅いぞ! 田中敬一」

 予定よりも30分遅れて、田中敬一が公園にやってきた。

「ごめん川島くん」

「その“川島くん”って言うのやめろ! おまえにそう言われると気持ち悪いんだよ!」

「でも、私達は大学からの“友達”という設定なのだろう?」

「……そうだけど、それはハルカちゃんと一緒にいるときだけでいいんだよ! 俺と二人の時はその呼び方やめろ」

「うむ。それもそうだな。私も気色悪いと思っていた。今日から“貴様”と呼ばせてもらおう」

「おまえ、自分の立場わかってんのか? 豚箱に放り込むぞ、この豚野朗!」

「じゃあ、何と呼べば良いのだ? ぜひ、レクチャーしていただきたいのだが?」

「俺のことは“川島さん”と呼べ。わかったな?」

「……川島よん」

「“よん”じゃない! “さん”だぁ!」

「川島いち、に、さん、だぁ!」

「いいかげんにしろ!! だまって俺の言うとおりにしろ! こんちくしょう!!」

 ……とまぁ、こんな不毛なやり取りを俺は田中敬一と30分ほど続けた。



「お? すまん、川島殿。メールが来たので、少し黙っていてくれるかな?」

 結局、俺の呼び方は“川島殿”で落ち着いた。多少はこちらも譲歩しないと、この男との会話に終わりが見えなかったから、しょうがない。