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44.カエデ



「ただの食べすぎですね。安静にしていれば直ぐに良くなりますよ」

 そう言うと、お医者様は病室を出て行った。

「……気持ちわる。暗黒豆腐、食べ過ぎた」

 私は豆腐屋『白角』の店主をぶん殴って直ぐ、ふけさんにメールを送り、いつもの喫茶『パンヌス』でふけさんのことを待っていた。ふけさんなら、直ぐに駆けつけてくれると思ったから。

 ふけさんを待っている間、マスターに愚痴を聞いてもらっていたのだけれど、急に気持ちが悪くなって、意識が朦朧とした。私はマスターに助けを求めて、救急車を呼んでもらった。そこらへんからから記憶がなくて、気がつくと病室のベッドの上だった。

「はぁー……やっちまった。夢じゃないんだよね……」

 私は、「あんなに不味い豆腐を食わせる店主が悪い!」と思いながらも、軽率であった自分の行為を悔いた。さすがに殴るのは、まずかった。


「カエデさん! いったいどういうことなの!? 説明して頂戴〜!!」

 私が反省していると、突如、病室にふけさんがやってきて私はびっくりした。

「どしたのどしたのどしたの!? 何で殴っちゃたの!!」

 ふけさんはかなり取り乱している様子だったので、私は気持ちを落ち着かせてから、ことの顛末(てんまつ)を説明した。