カシューナッツはお好きでしょうか?
41.警察官川島
「いったい何の用だ? 私は忙しいのだが」
明らかに不機嫌な表情で田中敬一はやってきた。
「今日は打ち合わせだよ。お前、アイドル『カシューナッツ』を知っているか?」
「知らん。『暗黒豆腐少女』以外のアイドルに興味はない」
田中敬一は即答した。
「あっそ。まぁいいや。とりあえず、お前は俺の言うとおりに行動してくれればそれでいい。言っとくけど、お前を捕まえようと思えばいつでも捕まえられるんだからな。ちゃんと俺の言うことを聞けよ」
俺は、自分の方が田中敬一よりも立場が上であることを改めて諭した。
「……ふん、わかったよ。お前の言うとおりに『友達ごっこ』に付き合えばいいんだろ?」
田中敬一は不満が顔に出ていたが、しぶしぶ俺の要求に応える決意をしたようだった。
「わかればよろしい。それじゃ、本題に入るぞ。お前がさっき知らないと言ったアイドル『カシューナッツ』のハルカちゃんが、お前に会いたいと、言っている」
「私に? ……なぜ?」
田中敬一は腑に落ちない表情をしていた。
こんなアホ面のおっさんに、なんでハルカちゃんは会いたいんだ? くそ! こんなおっさんよりも、絶対に俺のほうがいい男なはずなのに……。
俺はそんなくすぶる感情を抑えながら話を続けた。
「理由は知らんが、お前のことをアイドルプロダクション『わっしょい』の社長だと、勘違いしているんだ」
「……私が社長? ますます、わからん」
「とにかく、お前は社長で、俺の大学時代の同級生なんだ。いいな? あと、実際にハルカちゃんに会うときは、俺のことをほめろ! ほめてほめて褒めちぎれ! それでだな……」
俺はこんな感じで、田中敬一に指導を続けた。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ