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カシューナッツはお好きでしょうか?

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24.ふけさん



「だから、君をご当地アイドルとして売り出すことが市役所内で決定したんだよ!」

 私は状況を理解できていない少女に向かって力説した。私はもっと少女が喜んだリアクションをしてくれるだろうと期待していたので、少し熱くなっていた。

「……とりあえず、まとめると、私はアイドルとしてデビューできるわけ?」

「そうだよ! すごいだろ!?」

「……この町名産の『暗黒豆腐(あんこくどうふ)』をアピールするアイドルなわけ?」

「そうだよ。君も食べたことあるだろ? 味はいまいちだけど、見た目が真っ黒でインパクトは抜群さ!」

「……曲は誰が作ってくれるの? 歌詞は?」

「作曲家に頼むお金はないから、私達で作るんだよ!」

「それで、アイドル名は……」

「ズバリ! 『暗黒豆腐少女(あんこくとうふしょうじょ)』!! どう? いかした名前だろ?」

「…………ごめん、ちょっと考えさせて。頭痛くなってきたから、私帰るわ。会計よろしく」

 そう言うと少女は頭を抱えて、喫茶『パンヌス』の出口へと向かった。


「あれ? おかしいなぁ……」

 私は少女のために、少女の喜ぶ顔が見たくて、企画書を何度も何度も練り直した。少女のスポンサーになってくる企業を必死に捜し歩いた。それなのに、少女は喜ぶどころか、頭を抱えてしまった……。私は自分の無能さが心底嫌になった。自己嫌悪に陥った。そのとき、

「……とりあえず、私のためにいろいろとしてくれたこと、感謝しているから。ありがと。ふけさん、あんた私のファン1号だわ」

 少女は独り言のようにそう呟いて、喫茶『パンヌス』から出て行った。

「うぉおおおお!!!」

 私はうまく表現できない、心のそこから湧き上がる感情をもてあまし、思わず叫んだ。

 当然、喫茶『パンヌス』のマスターに「うるさい」と注意されたのは言うまでもない。