小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カシューナッツはお好きでしょうか?

INDEX|134ページ/139ページ|

次のページ前のページ
 

119.ハルカ




「川島さん、遅れてすいません」

 私がイタリアン『天使のお零れ』に来ると、もうすでに川島さんが待っていた。

「ハルカちゃん、全然待ってないから! さあさあ、おいしいパスタを食べよう!!」

 川島さんはいつも通り、ウキウキしていた。この人と一緒にいると、ドキドキはしないのだけれど、なんだか気持ちが楽になる。私と一緒にいるこの瞬間を、こんなにも喜んでくれる人がいてくれて、すごくうれしい。

「そうですね。今日は『天使のほっぺたボロネーゼ』にしようかしら。ところで、カエデさんは?」

 今日は、カエデさんも一緒に食事をする約束をしていたのだけれど、まだ来ていないのかしら?

「カエデちゃんなら、もう帰ったよ」

「え? そうなんですか?」

 今日のランチはカエデさんから誘ってきたのに、どうして?

「カエデさん、何か言っていましたか?」

 私は何か言付けはないのかと思い、川島さんに尋ねた。

「うーんと……」

 すると、何やら川島さんは言いにくそうな顔をしながら、口をへの字に曲げた。そして、数秒間黙った後、静かに口を開いた。

「ふけさんの居場所教えて! って言われて、それで、教えたんだ。そしたら、会計も済ませずに出て行ったよ」

「そうですか……」

 数日前、私はカエデさんにあることを言われた。その内容はいわゆる“宣戦布告”というものだった。その宣戦布告を聞いたとき、いろんな感情が渦巻いた。それは“焦り”だったり、“悔しさ”だったり、“悲しさ”だったり。でも、そんな感情以上に“楽しい”という感情が私の心に溢れていて、私は思わず笑ってしまった。

 あぁ、私の心はなんてヘンテコリンなのかしら。ぐっちゃぐっちゃなのに、それを楽しいと感じられるなんて。

「カエデさん、今回は黙って見過ごしますけど、敗北を受け入れたわけではないですからね」

 私は笑いながら、小さく呟いた。

「ハルカちゃん? 今何て言ったの?」

「何でもないです。さぁ、おいしいランチをいただきましょう!!」