カシューナッツはお好きでしょうか?
118.警察官川島
今日は久しぶりに、ハルカちゃんとランチだ。何でも、頼みごとがあるらしいのだが、まぁ、理由は何でもいい。会えればそれで、大満足さ!
「いらっしゃいませ」
俺はいつもハルカちゃんと食事をするときに使う、イタリアン『天使のお零れ』の店内に入った。すると、
「あ、川島さん! こっちこっち!」
俺のことを呼ぶ声が聞こえた。ハルカちゃんかな? と思いそちらの方を見ると、そこにはカエデちゃんがいた。はて? 何故カエデちゃんが? 俺はそう疑問に思いながらも、招かれるがままにカエデちゃんのいる席に座った。
「何でカエデちゃんがいるの? ハルカちゃんは?」
「あ、ハルカなら遅れてきますんで。ご心配なく」
「はぁ……それならいいんだけど」
俺は少し気落ちしながらも、ハルカちゃんが来るならいいかぁ、と思い『天使の涎パスタ』を注文した。
「実は、川島さんに話があるのは、私なんです」
カエデちゃんは一足先に頼んでいた『天使のくしゃみピッツア!』を食べながらしゃべり始めた。
「そうなの? 何の話?」
「いや、まぁ、私がどうこう言うことじゃないんだけどさ、ハルカのこと、守ってあげて。あの子、ああ見えて結構弱い子だからさ」
「え? えっと……?」
「うん、まぁ、その、私アイドルやめるから、ハルカの側にいられなくなっちゃうしさ」
「え、ええ? カエデちゃんアイドルやめるの!?」
「それに、私はハルカの“一番”を奪う決心、しちゃったんだよね…………」
「えっとね、カエデちゃん、全然話が読めないんだけど……」
「うん、やっぱりアイドルにとって自分のことを無条件で、全身全霊で好きでいてくれる人の存在って大きいからさ。今のところ川島さんしかいないんだよね、ハルカにとってのそういう人は。だからさ、何をしてあげて欲しいとかはないんだけど、いつまでも、ハルカのこと好きでいてあげて。そして、その好きだっていう気持ちを表現してあげてよ。お願いね」
カエデちゃんの目は強く澄んでいて、俺は拒否することなどできなかった。
「わかった。任せてよ! むしろ俺には、それだけしかできないけどさ」
「よかった。川島さんありがとう」
カエデちゃんは俺に向かって深く頭を下げた。
“この子は結構ガサツな子だと思っていたが、存外礼儀が正しくて友達思いの良い子なんだなぁ”
と俺が思った瞬間、
「それで、ここからが本題なんだけど!」
カエデちゃんは勢い良く顔を上げた。そして、勢い良くしゃべりだした。
「ふけさんの居場所教えて!!」
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ