カシューナッツはお好きでしょうか?
9.ハルカ
「はぁー……、やっと、追いついた……」
私は社長さんの後を必死に追いかけて、ようやく浜辺にいる社長さんに追いついた。私はこの胸の中にある感情を社長さんに伝えたくて、呼吸を整えながら言葉を考えた。
社長さんのおかげでアイドルという仕事を好きになれたことを、感謝したい。社長さんとの出会いが私にとってかけがえのないものだったと、知ってほしい。そして、うまく表現できないこの胸のドキドキを伝えたい!
「よし!」
私は呼吸と気持ちを整えて、社長さんのいるテトラポッドの向こう側を覗き込んだ。
「…………ザザァ……」
美しい波の音。唇を重ねあう男女。やけに速く鼓動する心臓。何故か零れ落ちる涙……
気がつくと私は、海と反対方向に走り出していた。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ