カシューナッツはお好きでしょうか?
112.ふけさん
先日、初めてマミマミがテレビに出演した。新人アイドルをダイジェストで紹介するだけの、わずか数十秒の出演だったが、これが決め手だったらしい。
「もしもし」
ついに、松原が電話で、コンタクトをとって来たのだ。
「よう、田中敬一。元気か? 俺はめんどくさいのが嫌いだから、単刀直入に言わせてもらう。マミマミをよこせ!」
「いやだ」
「まぁ、そう言うな。誰もタダでとは言ってないだろう。いくら欲しい?」
「電話じゃ話にならん。ちゃんとした書類と現金をこの目で見ないとな」
「ほぅ、俺様と直接会って交渉する気か? いいだろう」
「それじゃあ、3日後、○×町5丁目にある廃墟ビルに来い。そこで、話をしよう」
「あぁ、わかった」
準備は整った。あとはその日を待つだけだ。
”カエデさん、君はただひたむきに、何も考えずにアイドル道を邁進すればいいんだよ。君の邪魔をするものは、私が必ず排除するから、君は他のことは考えなくていいんだ”
私は心の中で強くそう思った。伝えないけれど、それでもいいと思いながら、強く強く思った。外に出さなくても、心という閉鎖的な空間のなかでも、強く願えばきっと、何かが起こる。
私はこのとき、そんな幻想を抱いてた。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ