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カシューナッツはお好きでしょうか?

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111.ふけさん



 舞茸さんの口から語られる事実に、私は戦慄した。松原という男の悪行。そして、その魔の手が今やカエデさんにまで伸びているということに、はらわたが煮え繰り返りそうになった。

「今あなたがプロデュースしているアイドル『マミマミ』を“おとり”にして、松原をおびき出して欲しいのです」

 だから、舞茸さんの言うとおりにしようと思った。

「松原は単純馬鹿です。ですから、あいつの行動は至って単純です。まず、“金”を使ってくるでしょう。ですので、そこでお金を受け取らずに断って欲しいのです。そうすれば、松原は次に“暴力”を使って来るはずです。私の予想が正しければ、仲の良いヤクザを数人連れてくるはずです」

 真美ちゃんには悪いが、やっぱり今でも私の一番はカエデさんだ。

「私は隠れて、ヤクザが現れた所を写真におさめます。それで、松原はジ・エンドというわけです。ですから、あなたはただ松原をおびき出してくれれば良いのです。簡単でしょ? こんなに簡単なことで、カエデちゃんは救われるのですよ。手伝っていただけますね?」

「はい……わかりました」

 微力ながら、カエデさんの力になれる。私はそれだけでうれしかった。たとえ、私の行動がカエデさんに伝わらなくても、カエデさんのために何かできるだけで、幸せを感じられる。

 ”これが無償の愛というものなのだろうか?”

 私は、与えるだけの愛など存在しないと思っていた。でも、どうやらそれは違ったようだ。伝えなくても、ただそこに漂っているだけも素晴らしい愛が、心(ここ)にあった。