カシューナッツはお好きでしょうか?
109.ふけさん
「すいませんね、お時間いただいて」
「いえ、大丈夫です」
カエデさんがアイドルプロダクション『わっしょい』に所属したとき、舞茸さんも一緒にプロデューサーとして所属することになった。
私は退院後、松原に脅されてカエデさんを奪われたことを舞茸さんにだけ正直に話した。すると、舞茸さんは鬼気迫る表情で「私も『わっしょい』に行かせて欲しい!!」と迫ってきたのだ。そこで、私はダメもとで松原に頼んだところ、「舞茸ひろしか……いいだろう」と言ってあっさりと承諾したのだ。
そのため、『わっしょい』所属後も、舞茸さんが『暗黒豆腐少女』のプロデュースを行っていた。正直、それだけでかなり安心できていた。舞茸さんは人としてもプロデューサーとしても信頼の置ける人だったし、カエデさんが一人ぼっちになる心配もなかったから。
「ところで、カエデさんの人気はすごいですね。いまやテレビで見ない日はないですもんね。順調そうでなによりです」
私がイスに座り、何の気なしにそう言うと、
「…………実は、そんなに順調でもないんですよ」
急に舞茸さんの表情が曇った。いったい何があったというのですか!?
「まず、あなたに謝らなければいけない。私はあなたを利用した」
「えっと……舞茸さん? どういうことですか? ちゃんと説明してもらえますか?」
「そうですね、順を追って説明しましょう。実は……」
そう言うと、舞茸さんは静かに語り始めた。
作品名:カシューナッツはお好きでしょうか? 作家名:タコキ