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カシューナッツはお好きでしょうか?

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108.ふけさん



「新人ナースアイドル『マミマミ』のデビューシングル『へたくそナースの愛の注射は痛すぎる』が発売しました。ぜひ、買ってください! そこのお兄さん、どうですか?」

 月日が経つのは本当にはやいもので、私が退院してから半年が過ぎていた。季節は春。

「今CDを買うと、マミマミと一緒に写真がとれますよ!」

 今日は『春一番、スカートゆらゆら写真会!! 〜もしかしたらパンチラあるかもよ〜』と題して、CDを売りさばくためのイベントを行っている。口からでまかせで始めた、ナースの真美ちゃんアイドル化計画。最初はカエデさんを納得させるためだけに始めたのだけれど、これが案外うまくいき、ついにはCD発売までこぎつけた。お金に関しても、豆腐屋『白角』の店長が援助をしてくれたから、問題なくやってこられた。この半年で『暗黒豆腐少女』の人気はさらに上がり、それに伴って『暗黒豆腐』も大ヒット。おかげで、豆腐屋『白角』の店長も羽振りがよくなり、マミマミの活動費を援助してくれたというわけだ。

「CD買ってくださいね♪ お願いしマミマミ!」

 真美ちゃんにもアイドルとしての才能があったらしく、本人も乗り気だった。やはり、私にはアイドルプロデューサーとしての才能があったらしい。最近では、『暗黒豆腐少女』に続き、マミマミのプロデュースにも成功したということもあり、アイドル業界で私の名前が話題にあがるほどになっていた。実はとあるアイドルプロダクションから勧誘も来ている。そろそろ、市役所の仕事をやめて、アイドルプロデュースに専念しようかな。

「撮影会の後にはミニライブも行いますのでぜひ聞いていってください!」

 川島君とはちょくちょく会って、酒を飲んでいる。川島君は会うたびに、「ほんとうによかったのか?」と聞いてくる。どうやら、川島君には私のカエデさんに対する本心が見えていたようだ。

「はい、撮りますよ〜。はい、チーズ! 残念、春一番は吹きませんでしたね〜」

 ハルカ君とはここ最近会っていない。『暗黒豆腐少女』同様に、『カシューナッツ』も売れていて、とても忙しいのだそうだ。川島君も全然会えていないらしく、「会いたいよ〜会いたいよ〜」と酔っ払うたびに泣き叫んでいた。

「いやー、真美ちゃんお疲れ。今日のミニライブも良かったね。CDの売り上げもまあまあだし、このまま頑張ろうね」

 今日のイベントも終わり、私が帰り支度を始めたとき、

「田中敬一さん、少しお話よろしいですか?」

 ふいに、声をかけられた。私が振り向くと、そこにはアイドル研究家の舞茸ひろしさんと、もとアイドル『クリスタル』の未実さんがいた。はて? 不思議な組み合わせだこと。いったい何用……? 

 私の頭にクエスチョンマークが浮かんで消えなかった。