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第12偏 『空白の3ヶ月 〜新人ナースとイチャイチャパラダイス〜』




<章102.ふけさん>


「さぁ、ふけさん、検査の時間ですよ。まずは採血からです!」

「嫌だ! 注射は痛いから嫌だぁ!!」

「大丈夫ですって。今度こそ、うまくやりますから!」

「き、君はいつもそうだ! いつもそう言って失敗しているじゃないか! いつになったらまともに注射できるようになるんだ? 私は君の練習台じゃないんだぞ!! このへたくそぽんこつナース!!」

「……酷いです。私だって一生懸命やっているのに……グスン」

「な、泣いたってダメだぞ。もうその手には乗らないからな!」

「…………それなら実力行使です」

「ちょ、ちょま!! ひ、ひぃいいいぃぃいいい!!!!」

 こんな感じで、私は新人ナースの真美ちゃんと、いつものくだらないやりとりをしていた。もう、”あの日”から3ヶ月が経とうとしている。



「うぅ……痛い、痛いよ〜」

「良く我慢できましたね。エライですよ」

 私よりも7つくらい年下の真美ちゃんだが、やけにいろっぽい表情をかい間見せることがあり、そのたび私は少しだけドキッとしてしまう。

「ところで真美ちゃん。私はほんとに今週退院できるの?」

「うーんと、今回の検査結果次第らしいですよ。前回の検査はよかったので、たぶん退院できると思いますけど」

「そうか……ついに退院できるのか」

 私は包丁の痕がまだ残るわき腹をさすりながら、ボソッと呟いた。

「ふけさんが退院するなんて、残念です。せっかくの練習台……じゃなくて、せっかく仲良くなれたのに」

「おい! 今“練習台”って言っただろ!?」

「あれ? 私そんなこと言いましたか? 記憶にございません」

「ムキー!! 私は患者だぞ! もっと敬え! コンチクショウ!!」

「はいはい。患者様、私はお仕事が忙しいので、これ以上あなた一人にかまっている時間はございません。失礼します」

「ムキー!! お前絶対バカにしているだろう!!」

 真美ちゃんは“ふけさんの声は聞こえません”というように、耳を押さえて病室から出て行った。


「…………」
 
 急に静かになった、白い病室。ひんやりとした静寂に耐えられなくなった私は、この3ヶ月の間にあったことを思い返した。

「この3ヶ月、いろいろなことがあったなぁ……」

 私は改めて、3ヶ月という空白の長さを思い知った。