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7.ふけさん



「はぁー、はぁー……」

 私は人気のない浜辺へと逃げ込み、警察が追って来ていないのを確認してから一息ついた。

「ふぁー、災難だった。くそ、あの警察毎回私のことを捕まえにきやがる! 私はただ、町行く人にじゃんけんを仕掛けただけなのに、なんで警察に注意されなけばいけないんだ! コンチクショウ! ……はぁ、疲れた」
 
 私は浜辺に寝そべり、上空を見上げて休んだ。
 
 ふぁああ……少し寝るか。私がそう、思ったとき

「ララララ〜♪」

 テトラポッドの向こう側から、謎の歌声が聞こえてきた。それは、心地よい波の音を掻き消すような、大きな歌声だった。
 いったい誰だ!? うるさくて眠れないじゃないか! そう思った私は文句の一つでも言ってやろうと思い、テトラポッドの向こう側を覗き込んだ。

「ルルルルル〜♪」

 そこには、一人の少女がいた。相手が強そうな男だったらどうしようかと思ったが、か弱そうな少女なら話は別だ。強気で文句を言ってやろう。そう思ったとき、ある考えが浮かんだ。

『この少女の歌声にあわせて、ばれないようにハモることができたら、おもしろそうだ』

 そう思ってしまった。そして、一度そう思ってしまったら実行せずにはいられないのが私の性分だ。私は「ゴホン」と軽く喉を鳴らして、少女の歌声に合わせるように、自慢の美声を発した。

「ララララ〜♪」
「ララララ〜♪」

「ルルルル〜♪」
「ルルルル〜♪」

 ふふふ、さすが私だ。あの少女、全然気付いていないぞ。

「ロロロロロ〜♪」
「ロロロロロ……ロ?」

 異変に気付いたときにはもう、遅かった。私の目の前には、硬く握られたコブシが迫っていた。

「ハグぅ!!!」

 私の目の前は、真っ暗になった。