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カシューナッツはお好きでしょうか?

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6.警察官川島



「またお前か! 人の迷惑を考えろ!」

 これで7回目だ……。いったいこの男は何をしたいんだ!? さっぱりわからん。

 俺はこの町で有名な変人である”田中敬一”という男を再び捕らえた。この男、まだ28歳にもかかわらず、とても老けた顔をしている。そのため、交番内では「変なおじさん」と呼ばれている。

「離せ! 国家の犬め! コンチクショウ!!」

 この男は今回、道行く人にいきなりジャンケンを仕掛けるという奇行をしていた。何が楽しくてそんなことするのかわからんが、苦情の電話が殺到したので、この町の交番で一番下っ端の俺が注意しにきたのだ。正確には行かされたのだ。いつもそう、酔っ払いとか不良の喧嘩とかそういった面倒くさいことは全て俺が処理する羽目になる……。あぁ、はやく後輩こないかなぁ。コキつかってやるのに。

「ほら! いいかげんおとなしくしろ! とりあえず交番に行くぞ」

 俺は抵抗する変なおじさんを羽交い絞めにし、無理やり交番に連れて行こうとした。そのとき、

「社長さん!」

 俺は思わず腕の力を緩め、変なおじさんを放してしまった。俺の目の前にはあの、アイドル『カシューナッツ』のハルカちゃんがいたのだ!! か、か、か、かわいいい!!!! かわいすぎる……。        
 俺は思わずハルカちゃんに見惚れてしまった。

「社長さん、私、私ずっと、あなたにもう一度あいたかったんです……こんな街中で偶然あえるなんて、うれしいです」

 はにかむ様に微笑むハルカちゃん。もう、かわいすぎです。俺の心臓はバクバクだった。

「待ってください! 社長さん!!」

 ハルカちゃんは艶のある髪をなびかせながら、俺の横を走り抜けていった。そのとき、ほのかに漂うシャンプーの香りが鼻腔を通り抜け、俺はまるで夢の中にいるような浮遊感を味わった。あぁ、なんていい香りなんだ……。俺は浮遊感を楽しみながら、走り去って行く彼女の後姿を見送った。
 パタパタと揺らめくスカートから伸びる、白くて細い足。ギュッと抱きしめたら折れてしまうのではないかと思えるほど、華奢な背。そして、そんな彼女の目線の先には……変なおじさん? はて? どいうことだ? そういえば「社長さん」ってハルカちゃんが言っていたような……。

 俺は次々と浮かんでくる疑問をもてあましながら、美しい少女の背中を見送った。