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カシューナッツはお好きでしょうか?

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95.ふけさん



「ハァハァ……社長さんは……中学時代何部でしたか? 幼少期の、ヒーローは? ゼエェ、ゼエェ……社長さんの、座右の銘は……ハァ、ハァ……」

 よほど気持ちがたまっていたのか、ハルカ君は10分近くノンストップで言葉を発していた。後半は息も絶え絶えで、そんなに一生懸命にならなくてもいいんじゃないの? そんなに絶え間なく息を吐き出していると、息が吸えなくて呼吸困難になるよ? 大丈夫? そう心配に思ってしまうほどだった。

「わかった。わかったから、少し休もう。君の気持ちはちゃんと伝わったから。時間はかかるかもしれないけれど、君の質問に全て答えるから。だから、落ち着いて」

 ハルカ君は、精一杯私に思いを伝えてくれた。私は、ハルカ君の気持ちに誠意を持って答えなければいけない。こんなに純粋で誠実な気持ちを踏みにじってはいけない。夜空に散った言葉達を、そのまま迷子にしてはいけない。結果はどうであれ、私は誠実な答えをハルカ君に伝えなければいけない。

 確かハルカ君は『カシューナッツ』というアイドルグループに属しているという。どれ、CDでも買ってみようか。私もハルカ君のことを知る努力をしよう。それが、ハルカ君に対する誠意だと思うから。

「…………」

 ハルカ君はさすがに疲れたのか、急に黙りだした。

「さぁ、飲み物を買って来るから、そこの木の下で休もう」

 私がそう言って、飲み物を買いに行こうとしたとき、ハルカ君が絞り出すように言葉を発した。

「何で、社長さんはカエデさんのこと……探していたんですか?」

 !? その言葉に、思わずドキッとした。何故ハルカ君の口からカエデさんの名前が? 何で私がカエデさんを探していたことを知っているんだ? ハルカ君は私とカエデさんの関係を知っているのか? もしかして、私のこのカエデさんに対する感情にも……気づいているのか?

 そう思うと、なんだか無防備な心をのぞかれている様に思えて、気が動転した。

「あ、あえっと……」

 私がしどろもどろしていると、ハルカ君が澄んだ瞳で私の目を凝視してきた。これは、逃げられない。完全にロックオンされている。どうしよう……。私がそう思った瞬間、

「ドーーーーーーーン!!! ドン、ドーーーーン!!」

 ものすごい大きな爆音が夜空に鳴った。何事だ!? と思い、音のした方を見上げると、きれいな花火が夜空に咲いていた。

 何だ、花火か……。綺麗だなぁ。

 私が少し安心した表情で振り返ると、そこにハルカ君はいなかった。ハルカくん、どこへ? そう思った私が目線を下ろすと、そこにハルカ君が倒れていた。