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ワタシとアキ

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勉強不足なんて!
3日間だけの研修の後、すぐに実際にお客様が来られるカウンターにおっ放り出されたら、そりゃ足りない所もあるだろうに!
一番手慣れた感じだったナホでさえ、お客様に怒られたというのだ。
ワタシだってカウンターに出ていたら、すぐに慌ててしまうワタシの事だ、どんなミスをしでかしたか想像もしたくない。
シミュレーションは相手が同期だったり講師の社員だから、すぐに間違いを指摘してくれるし、だからそこで一旦体勢を整える事ができる。
しかしお客様は何も知らない。スタッフが案内をしない限り、何もわからないのだ。
それを研修中の人間に任せ、ベテランが後ろで見ている以上、不足した所を補い、彼女に不足していた知識を与えるのが派遣先の先輩や社員の仕事なんじゃないのか!
たった3日の研修で、しかもお客様というのは、マニュアルにはないアプローチをして来るのが当然なのに、「勉強不足」だなんて!
研修で見ていた限り、アキは最低限の事はきちんと把握していた。
アキのシミュレーションを見ていて、「あ、これワタシの案内には足りなかったな。なるほど」と思った事だって何度もあった。

とワタシは思ったが、アキには言わないでおいた。
アキが「勉強不足」という所を気に病んでいたら、傷をえぐる事になる。

研修の3日間で、不思議な程ワタシたちの友情は育まれていた。
そう、研修からワタシの契約解消とアキの退職は、たった1週間の間に起こった事だ。

「さっき、親には契約を解消されたって話した。嘘はつきたくないんだけど、自分から辞めたとは言いにくい」
こういう所が真面目なのだ、アキは。
実家に住んでいるアキは、当然仕事が決まったのにどこにも行かないでいたらご両親も訝しがるだろう。
仕事を離れた事は言わなくてはならない。
その点ワタシはひとり暮らしなので、気楽なモノである。
(ただ、その仕事を紹介される1か月前、仕事がないのでお金もなく、部屋に引きこもってネットで仕事探しをしていたら、アパートの住人誰もがワタシの姿を見ていないというので、大家さんをも巻き込んだ騒動になったのだが。それなりに病院や買い物や図書館に行っていたのだが、そういう時には誰とも会わなかったのだ)
ワタシは長期間仕事が見付からなかったのもあって、その仕事が決まったときは真っ先に親にメールを送り、友達にも報告した。
その手前、風邪こじらしたら辞めさせられたとは言いにくい。
次の仕事が見付かるまでは、黙っていようと思っている。

作品名:ワタシとアキ 作家名:すのう