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アイ・ラブ桐生 第一章 4~6

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 女子学生たちのグループで、話も慨に終わったらしく、
一斉に立ちあがるとあっというまに散りじりになってしまいました。
呼び止める暇も有りません。
こちらのほうでも話が終わり、軽く呑みに出ようということで
階段を降り始めた時でした。



 「しばらく。」
と女性が、私の前に立ちました。




 「あっ」、と気が付き、名前を言おうとしたときに、
「私も連れてってよ」と、階段を塞いでしまいます。
暗くなり始めた帳(とばり)のなかで、
もう一度、しっかりとその顔を確認しました。
確かにそれは、同級生のレイコでした。
2年ぶりに見る顔は化粧がされていて、どこか大人の顔にも見えました。



 「珍しいところで逢うね」




 「なぁに言ってんの。
 この間居たでしょう、顔見たわ」

 「どこで?」

 「○○サークルの、歌声喫茶。」




 それは、月に一度だけひらかれる、
主に学生たちが集まる歌声喫茶のことです。
そこへは確かに行きましたが、レイコの顔を見た記憶は
まったくありません。



 「あいかわらず、なんだから、もう。
 せっかく会ったんだもの、呑みに行きましょう。」

 「まだ、未成年だろ・・(それは、オレも同じだが。)」

 「どうせ、行くんでしょ?」





 うん、と振り返り、仲間を探すと・・
もう階段にも、降り切った下の空間にも、誰一人として
残ってはいません。
みんな帰ったのかと思いながら、ポケットから煙草を取り出すと、
間髪をいれず瞬時にレイコの指がのびてきました。




 「未成年に煙草は、ダメ!。」

 ひょいとかすめ取り、ポンと屑籠へ投げ捨ててしまいます。

 「酒はいいのかよ」

 「ばれなけりゃ、だいじょうぶ!」



 こいつは、いつもこういう奴です。
つかみどころのないことを平気で口にするし、
なぜかいつでも決まって、上から目線で私にものを言います。



 「明日の朝は、早いぜ。」

 「寝ずに行くもの。」

 「大丈夫かよ・・・」

 「電車で、寝られるもの・・・」


 などと会話しつつ、すでに足はいつもの焼鳥屋へと向いていました。
明日の朝、本当に大丈夫かなと思いながらも、
先輩の両親が営業している、縄のれんを目指してレイコと
肩を並べて歩きはじめました。



 レイコは、いつも突然にあらわれます。
ぴったりと、いつの間にか私に寄り添っていたかと思えば、
また、あっという間にいなくなってしまいます。
小学校に入る前からも、そうでした。
小、中学校と9年間、不思議なくらいにいつも同じクラスです。



 「そういえば、お前。
 いつも俺の席の近所にいたよなぁ。
 俺の前だったり、後だったり・・」

 「なぁに言ってんの。生まれた月は同じでしょう。
 あいうえお順だって、ひとつ違い。
 背丈もおなじだったら、
 どうやっても、
 そんな風になるのが、当たり前でしょ。」



 なるほど。・・そういうことか。
じゃあ、もう15年ちかくにもなるんだな・・こいつとは。


(5)へつづく