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茶房 クロッカス 最終編

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「実は先日、前にうちで働いていた薫ちゃんていう子が無事出産を終えて、退院の日の帰りにうちの店に寄ってくれてね。それも沙耶ちゃんの計画だったと後で知ったんだけどさ……。俺は忙しくて、途中から会話に入ったらちょうどその時に、沙耶ちゃんが君のことを話していたんだよ」
「えっ、私のこと?」
「あぁ、正確に言うなら『君の恋人のこと』かな」
「えっ? 私の恋人って、……悟郎くんのこと?」
「いゃ〜嬉しいなぁ。俺を恋人と思ってくれてるんだ!」
「思うも思わないも、私にとっては、曲がりなりにも恋人なんて呼べるとしたら、それは悟郎くんぐらいしかいないもの」
「うーん、それって喜んでいいのかなぁ。ちょっと複雑だ」
「ふふっ、そんなことより、早くニュースと言うのを聞かせてよ!」
「あぁ、ごめん。すぐ話が脱線しちゃうなぁ。アハハハ……」
「――うん、でその時に、沙耶ちゃんがお母さんの恋人のことを話していて、薫ちゃんが沙耶ちゃんに色々聞いたりしてたんだけど、沙耶ちゃんはまだお母さんの彼氏のことを何も知らないようだったから、ちょうど良い機会だと思って聞いてみたんだよ」
「えっ、何を?」
「だからー『もしその彼氏が俺みたいな人だったらどうする?』って。フフッ」
「へぇー! そんなこと聞いたんだ」
「オォー!」
「で、沙耶なんて言ったの?」
「イヤ〜ハハハ……」
「もうー! またそうやってじらすぅ〜」
「フフッ、あのさ〜、その前に薫ちゃんが言ったんだよ。『沙耶、マスターがお父さんだったらいいな! って、前に言ってたもんね』って」
「えぇー!? 沙耶がそんなことを言ってたのぉ?」
 優子は驚きのあまり、両手で頬を挟みこむようにして、まるで有名なムンクの『叫び』のような顔をした。
「まぁ、優子が驚くのは無理もないよ。俺もそれを聞いた時は信じられなかったから……」
「うーーん」
「だからさ、前に話しただろ? 俺たちのことを沙耶ちゃんに話すかどうかってこと。優子はこの前の電話ではもう少し待って欲しいと言ってたけど、沙耶ちゃんがそう思っている以上、待つ必要もないんじゃないかなぁ〜」
「そうねぇ〜〜」