茶房 クロッカス 最終編
それから数日後、京子ちゃんが店に来た。
俺は早速先日の件を京子ちゃんに尋ねた。
「どうだった? 京平からの連絡は?」
そう言った俺の問いに対して、京子ちゃんは下を向いたまま首を横に振るだけだった。
「そうかぁ……」
俺たちの間の空気はどんよりと暗くなった。
《京平の奴、一体何のために帰って来たんだよ! 変な期待を持たせるなよ!》
俺は心の中で怒りを発奮していた。
「京子ちゃん元気出して!」
そこへ沙耶ちゃんが見兼ねて声を掛けてくれた。
「お父さんもダメじゃない。一緒になって暗くなってちゃ」
「――あ、あぁ、そうだよな。ごめん」
今では沙耶ちゃんは俺をお父さんと呼び、そして俺はなぜか沙耶ちゃんの尻に敷かれてる?
「京子ちゃん、大丈夫だよ! だってお父さんだって、うん十年も経ってから私の母と再会したのよ。京子ちゃんだって、まだまだ可能性あるんだから」
「うんそうだ! 確かに沙耶ちゃんの言う通りだよ、京子ちゃん。まだ可能性はたっぷりあるよ。俺のことを見てみろよ! アハハハ……」
俺がそう言って笑うと、京子ちゃんもつられたように笑い、
「うん、そうよねっ。悟郎さんのことを考えたら、私なんてまだまだ何年も可能性あるものねっ! うふふっ」
「そうだよ!」
やっぱり沙耶ちゃんは、俺の娘だとは言え本当に大したもんだ。
そう思うと俺は無性に誰かに自慢したくなったのと同時に、京子ちゃんの顔に可愛い笑顔が戻りホッとしたのだった。
それから約二週間後のことだった。
京子ちゃんが店にやって来た。
作品名:茶房 クロッカス 最終編 作家名:ゆうか♪