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茶房 クロッカス 最終編

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 実は私たちが高校を卒業して、京平がいよいよ上京するっていう日。
 私たちは別れ難くて電車の時間より少し早目に駅に来て、その時にちょうど目に入ったこの店でひと時を過ごしたの。
 私と彼はたとえ離れ離れになっても決して気持ちが離れたりはしない。そう信じていたわ、あの時は……。
 ――なのに……それはお多恵さんも知っての通りだけど、終わってしまった。
 そしてここで話をしてる時に、マスターの昔の恋の話を聞いたの。
 ちょうどその時の私たちと同じような状況だったらしいの。
 マスターは私たちが自分と同じようにならないようにと、ある曲を掛けてくれて、私たちはその時、決してその曲のラストのようにはならないようにしようねって約束したの。
 それなのに結果的にはマスターと同じことになってしまった。
 私は京平が上京し、淋しくなるとここへ来てマスターと話してた。
 そして彼と連絡が取れなくなってからも、ここへ来てマスターに色んなことを相談したり聞いてもらったりしてたの。そしてその都度励まされて……。

 あの頃は本当に辛くて悲しくてどうしようもなくて……、それでもその都度マスターに話を聞いてもらうことで何とか今日まで来れたと思うの。
 言わばマスターは私の相談役、または同じ思いをした運命共同体ってところかな? ねっ! 悟郎さん!

 京子ちゃんの話を聞きながら、俺も同じようにあの時のことを思い出していた。
 あの時京子ちゃんに話した優子と、今は結婚して夫婦になっている。
 あの時にはまったく想像もしていなかったのに……。