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茶房 クロッカス 最終編

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「――で、どうしたの?」
「京子、落ち着いて聞いてよ! 京平が帰って来てるのよ!」
「えっ、京平が?!」
「どう? 驚いたでしょう? 私、偶然出会ったのよ。彼は最初、私のことが分からなかったみたいよ。この子連れてたし……」
 そう言ってお多恵さんは娘の頭を撫でた。
「あっ、ゴメン! 春美の飲み物を頼むの忘れてたわ、お母さん。マスター、すみませんけど、この子にオレンジジュースもらえます?」
「あいよっ!」
 俺は急いでオレンジジュースをグラスに注ぐと、ストローを添えて春美と呼ばれた可愛い少女の前に持って行った。
「どうぞ〜」
「ありがとう。おじちゃん」
 可愛い声でお礼を言われ、俺はにっこり微笑んだ。
《でも、おじちゃんかぁ〜》 内心俺は少し凹んでいた。

 ちょうど席まで行ったことだし、さっきのことを話した方がいいだろうか。少しその場に立ったままで考えていた。
「ん? 悟郎さんどうかした?」
 立ったままで、ぼうーっとしてるように見えたのだろう。京子ちゃんが俺の顔を見上げて尋ねた。
「うん、実は……」
「………?」 
 京子ちゃんとお多恵さんが『何を言い出すんだろう?』と、不思議そうに見ている。
「――実はさっき、京平が店の前まで来たんだよ」
「えぇっ?! マスター、京平のこと知ってるんですか?」
 お多恵さんが目をひん剥いて尋ねた。
「そうなの。悟郎さんとはそれが縁で、それから私もここによく来るようになったのよ」
 俺に代わって京子ちゃんが質問に答えた。
「えっ? それって一体どういうこと? ちゃんと分かるように説明してよ」
「分かったわ」
 そう言うと京子ちゃんは、あの時を思い出しながらお多恵さんに説明していった。