小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

茶房 クロッカス 最終編

INDEX|27ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 
 
 そしてホッとした途端、その時になって思い出した。祭壇まで歩いていく途中で見た光景を……。
 重さんが夏季さんと隣同士に座り、羨望の眼差しで俺たちを見ていたことと、京子ちゃんが、嬉しさと悲しさが半々に入り混じったような複雑な表情をしていたことを。
 今日の日を迎える少し前、重さんと夏季さんが店に来て、二人の今後のことを話してくれた。もちろん予定だけど……。
 あれから夏季さんは、別居中の旦那さんに離婚の申し入れをしたらしい。
 そして現在、話し合い進行中だとか……。
 しかし特別の条件を出してるわけではないので、まもなく離婚は確定になるだろうとのこと。
 そしてもちろんその後は、晴れて重さんと籍を入れるつもりでいること。それらを嬉しそうに話して行った。
 本当なら夏季さんも、今日の俺たちみたいに結婚式をあげたいんじゃないだろうか? あの眼差しの中にはそんな女心が滲んでいたように思えた。
 きっと重さんが自分の年を気にして、結婚式はなしで……と、言ったんじゃないだろうか? あの時、結婚式を挙げるとは一言も言ってなかった。
 もしそうなら、せめて俺の店で簡単な結婚式でも開いてあげようか……。
 そんなことを考えてる場合じゃないのに、気が付くと考えていたりした。

 そして京子ちゃん。
 同じ悲しみと淋しさを持つ仲間として、これまでお互いに支え合って来たのに、俺だけが先に幸せになって、きっと淋しく感じているんだろう。
 彼女の横顔にそんな翳りを見つけて、胸が痛くなった。
《京子ちゃんにも早く本当の幸せが訪れますように……》
 自分が幸せなだけに、余計にそう願わずにはいられなかった。

 結婚式が無事に終わり、俺たちはまた拍手の中を退場していく。
 今度は参列者の中から写真を撮る人や、俺たちに声を掛けるためなど、数人の人が立ち上がって、入って来た時より遥かに賑やかな雰囲気になった。
「良くん おめでとう! 沙耶ちゃん幸せにねっ!」
「マスター頑張れっ!! 優子さんお幸せに〜!」
 そんな声があちこちから飛び出してきた。
 さぁ、次は披露宴だ。