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茶房 クロッカス 最終編

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 最初の打ち合わせ通り、すべては若者優先で進んでいった。
 神父さんの言葉は、これまでテレビや映画で見聞きしたものと寸分違わなかったけど、その時の俺には荘厳な神の声のように聞こえた。
「中矢良一さん、汝は、この大谷沙耶さんを妻とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しき時も、これを愛しこれを敬い、これを慰めこれを助け、その命のある限り真心を尽くし、変わらず愛し続けることを誓いますか?」
「はい、誓います」
 良くんが真摯に答えた。
 同じことを今度は花嫁に向かって言い、そして確認。
 沙耶ちゃんが「はい、誓います」と答え、指輪の交換と誓いのキス。

 二人がキスしてる間、俺はどういうわけか、息を止めて二人を見つめていた。
 一連の流れを、良くんと沙耶ちゃんを見て十分予習したはずなのに、いざ自分の番になると緊張の余り声が出なくて、「はい」という言葉すら言えなくて焦った。
 少し間が空いて、ようやく返事をしたからか、会場内に安堵の溜息が溢れた。
 俺も正直ホッとした。まず第一関門突破。
 そして次は指輪の交換。
 サイズはきちんと計って用意しているので、合わないはずはないのに、なかなかスムーズに入らない。
 焦っているせいなのか、だんだん額に汗が滲んでくる。
 それでも何とかやっとの思いで指輪が嵌った。
「ふぅ〜」と、聞こえないように溜め息。
 何とか第二関門も突破!

 そして最後が誓いのキス!
 優子の顔の前に掛かっている薄いベールをそっと上に捲ると、優子が微笑み、そっと目を閉じると心持ち顔を上に向ける。
 俺は優子の肩に手を掛け、自分の方へ寄せるようにしながら、吸い寄せられるようにそのピンクの唇に自分の唇をそっと重ねた。
 唇を離して、思わずニヤ〜ッと笑ってしまった。だって唯一これだけがスッと上手くいったから。
 会場から割れんばかりの拍手が巻き起こった。