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茶房 クロッカス 最終編

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「そろそろ時間ですよ」
 準備を整え一休みしていた所へ、係の人が俺を呼びに来た。
 さぁ、いよいよだ!
 係の人に案内されて、俺が一つのドアの前まで行くと、みんな先に来ていて俺が来るのを待っていた。
 誰よりもまず、俺の視線は優子を捉えた。
「優子、綺麗だ! まるで天使みたいだ」
「もう、悟郎くんたら……。この年で天使じゃ、本物の天使が悲しむわよ」
 そう言いながらも、その頬はみるみる赤く染まっていく。

 良くんと沙耶ちゃんは若者らしく、俺たちよりよっぽど堂々としていて、二人は早々と腕を組んで待っていた。
 沙耶ちゃんのウェディングドレスは散々迷って決めたと言っていたが、本当に可愛らしいデザインで、沙耶ちゃんにとても良く似合っている。きっと良くんも惚れ直したことだろう。
 待ち兼ねた優子が恥ずかしそうに俺の左腕に右腕を絡ませると、いよいよ入場だ。

 重いドアを開けて入ると、そこは教会になっていて、左右に分かれた参列席にはすでに大勢の人が腰掛けて待っている。
 そしてドアが開いた途端、今まさにバージンロードを歩き出そうとする俺たちに、その人たちの視線のすべてが一斉に集中してきた。
 俺たちが今日の主役なんだから当然ではあるが、俺は緊張で足がすくむのを感じた。
 普通の結婚式では新郎が祭壇の前で待ち、そこまでは花嫁の父が娘の手を取って歩いて来るものだそうだけど、優子の父親は、とてもそんな照れ臭いことはできないと言うし、沙耶ちゃんの父親はいないし……で、結局そのシーンはカットして、花嫁と花婿が手を取り合って祭壇まで進むことにした。
 その結果、俺は今まで経験したことのない緊張を強いられた。
 痛いほどの、しかし温かい視線を身体に受けながら拍手の中を通り抜け、ようやく神父さんの待つ祭壇の前まで来た。