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茶房 クロッカス 最終編

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「いやぁ、それはめでたいじゃないですか。あの作品は、俺が読ませてもらったのは最初の触りの部分だけだったけど、かなり興味をそそられる内容だったし、あの先を書いていったらきっと凄い作品になると思ってましたよ。だってみのさん、本当に上手いもんなぁ」
「ありがとう、マスター。あの時マスターが色々感じたことを話してくれたお陰で、私もあの作品に幅を持たせることができたんですよ。そしてそれを長編にして応募したら『大賞』受賞。これはもうマスターのお陰としか言いようがないでしょう。だからこそマスターには即刻知らせたかったんです」
「あぁ、そういうことでしたか……。俺の感想なんて知れてますよ。すべてはみのさんの才能故です。俺に礼など言う必要はありませんよ。それにしても嬉しいことがある時には重なるもんだなぁ〜」
「淳ちゃんたちの赤ん坊に、みのさんの出版。それに俺たち……」
 つい俺は一人ごちた。
「俺たちって? あっ、そう言えばパンフレットの話は?」
 淳ちゃんが思い出したように言った。
「もしかして、いや、まさかとは思うけど……、悟郎ちゃん結婚するのか?!」
「アハハハ……」
 俺は取り合えず笑ってその場を繕った、つもりだったが、お客さんの様にはいかなかった。
「悟郎ちゃん、本当なの? 本当に結婚するの? もしかして前に話してくれた人? ねぇ、そうなの? そうなのねっ!」
 さすがに礼子さんの追及からは逃れられなかった。
 礼子さんの厳しい追及の手に諦めた俺は、沙耶ちゃんと目を見交わした。
《えっ、そうか……。やっぱりな》
 俺は、やはり俺が言うしかないか……と、沙耶ちゃんからのテレパシーを受け取り、そう思った。
 家族になると決めてからというもの、異常に沙耶ちゃんの考えていることが手に取るように分かりだした。
 まぁ、その一つひとつを直接沙耶ちゃんに確認したわけじゃないから、もしかしたら勝手に俺がそう思ってるだけなのかも知れないが……。アハハハ……。
 あっ、今はそんなこと考えている場合じゃなかった!