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茶房 クロッカス 最終編

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 俺と良くんは、二人の気持ちが落ち着くまでただ待つだけだった。
 そしてふっと気付いて、良くんに俺は言った。
「沙耶ちゃんは良くんのプロポーズを受けたってことだよな。良くん、やったな! 良かったじゃないか。それに比べ俺は、いつ返事がもらえるやら……」
「えっ! ということは、マスターもすでにプロポーズ済みってことですかぁ?」
 良くんがいかにも驚いた風に目を見張った。
「あぁ、まぁ一応なっ」
 俺は少し不機嫌になりそうだった。
「あっ、そうだったわ。悟郎くんごめんなさい」
 俺たちの会話をちゃっかり泣きながらも聞いていたらしい優子が、涙を拭いながら俺にそう言ってきた。
「あぁ、まぁ〜な……」
 俺としては答えようがない。
「そうだったんだ。お母さんもプロポーズされてたのねっ」
 沙耶ちゃんが嬉しそうに、そして冷やかすように母親を見た。
「えぇ、だけどまだ返事はしてないの」
「どうして?」
「どうしてって……。さっきも言ったようにまだ自信がないのよ」
「ねえ、おかあさん。あ、こんな呼び方はまだ早いかな? アハハ、すみません。でもどうせそうなるんだから、いいですよねっ。それはともかくちょっと聞いてみるんですけど……。おかあさんが自信がないっていうのは、どういう自信なんですか?」
 良くんが奇妙なことを尋ねた。
「どういう自信って……、それはつまり、男性を愛する自信かしら?」
「あのう、愛する自信がなくても、愛される自信はどうですかぁ?」
「愛される自信?」
「はい。僕は沙耶ちゃんを愛しています。って堂々と言えます。これは愛してるってことに自信があるからだと思います。でも逆に、僕に愛されてる沙耶ちゃんは、愛されてるってことに対して自信を持ってもいいんじゃないでしょうか? つまりはそれが愛される自信ってことです。おかあさんの場合は、マスターに愛されてるんだから、愛される自信を持ってもいいんじゃないでしょうか?」
「ねえ、マスター。おかあさんのことを愛してるんですよねっ?」
 突然、良くんは俺に声を掛けた。
「あ、あぁもちろんだよ!」
 俺は迷わず答えた。
「ほらね! 愛されてるでしょ!?」
 良くんは自信に満ちた目で優子を見た。
「すっごぉーい! さすが良くん、学習塾で先生をしてるだけあるわぁ! 何だか惚れ直しちゃう」
「いやぁ〜それほどでも……、アハハハ」
 良くんが照れて頭を掻いた。