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アガペー 〜あるAV女優へ〜 (後編)

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 俺たちは一つのクラブに狙いを定めて、生バンドの演奏を聞きながら豪快にジョッキを叩き合わせた。
 最高の夜だ。酔った女がカウンターの上で踊るのはどこの国でも定番だ。それを下から覗く連中もれっきとした尊い世界基準だ。
 それでも酒の飲み方が穏やかになったなと言われた。少年はクソを漏らすまで何かに追われるように飲んでいたとも。
「時代の変化に気付いたのが随分遅かったんだよ」とだけ答えておいた。
 終始和やかなムードで再会の宴に興じた。
 だが、トイレへ行く途中に出会ったコロンビア人の女にコカインを安く分けてもらったことは内緒にしてたんだ。
 ごめんな、俺は性格が悪いんだ。
 友人と別れて一人で宿に戻るとデリヘルを呼んで、翌日の昼頃までバーボンとコカインでしけこんだ。
 少しばかりバーボンを飲み過ぎたがなんてことはない。最高のコカインだ。酒と寝不足のせいもあってチンコは勃たなかったが、なかなか濃密な時間を過ごさせてもらった。
 最後の夜はいつもの寿司屋でうまい日本酒と新鮮な刺身に舌鼓を打ち、翌日には成田行きの便に乗り日本に戻った。
 休暇ってやつだ。ありがたい邂逅に僥倖。これ以上の旅はない。

 波の音は穏やかで、風もまた然り。
 波の音も世界中どの海に行っても変わらない。てことは海や山や川、自然にまつわる思い出があれば、世界中どこに行っても想い起こせる。
 良い思い出然り、悪い思い出然り。
 しかし夜の海はとてもじゃないが手招きしているようには見えないな。
 何かのチャンスを虎視眈々と窺っているようにも見えてくる。まったくもっておぞましい。