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アガペー 〜あるAV女優へ〜 (後編)

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    七 フェア

 この仕事の給料はそこそこいい。
 ただ休みがない。いや、休みはあるが、決まってない。
 勇十赤が明日は休みだと言えば休みになる。勇十赤から連絡が来ない場合も結果的にだが休みになる。
 休みというか自宅待機だ。待機だからもちろん酒は飲めないし、連絡が来るかも知れないから友人と会うのも憚られる。
 久々にゆっくりと酒を飲んでみたい気もするし、のんびりとマリファナでも吸いながら映画を流し見する休日も悪くない。
 だが休みはまだ一日もない。結果的な休みが一日あっただけだ。
 連絡が来なかっただけで、あぁ休みだったんだなと一日を振り返る瞬間は不幸だ。
 込みあげてくる喪失感に襲われていながら、忠実に待ち続けた自分を褒めてあげるほどの器は持ち合わせていない。
 早朝も日中も夜中も関係なく、勇十赤の腹が減ったら俺の電話が鳴る、くらいの覚悟か。
 金を使う暇がないのもありがたいと言えばありがたい。
 
 一段落着いたらまた小旅行にでも行きたい。
 次はアジアがいいな。
 中国の悠久の歴史に触れてみたい気もするし、アンコールワットのような世界遺産も見てみたい。インドでのんびりするのもよさそうだ。イスタンブールの活気に揉まれてみたい気もする。
 バックパッカーにも憧れるが、神経質な性格が仇になりそうでなかなか踏ん切りがつかない。
 去年の今頃はサンディエゴに行ってたんだ。
 思いつきで飛行機のチケットを取って、間髪置かずに目的地だ。
 アメリカに行ったのは約十年ぶりだった。
 ダウンタウンからはかなり離れた場所にある安宿をとり、近くのビーチへも歩いて一時間近くかかるという悪条件ではあったが、サンディエゴで一番美味いと評判の寿司屋が近くにあって重宝した。
 なんてことはない、昼頃に目覚めたらビーチに向かい、適当に散策した後はビーチ沿いのステーキハウスでバカでかい肉とビールを頼み、夜は寿司屋で日本酒を飲んで、酔っ払ったら宿に戻って寝るだけだ。
 シーズンオフということもあり、朝と晩は妙に冷えこんだが日中は過ごしやすかった。
 そういえば一週間という滞在期間の中で一日だけ、サンフランシスコでよくわからない仕事をしてる昔の友人が駆けつけてくれて、ナイトクラブやレストランが百軒以上連なるという街を案内してくれた。街をあげて騒ぐ気満々のバカでかい盛り場だ。