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アガペー 〜あるAV女優へ〜 (後編)

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 爆発的に広い海はどうやら人々に開放感をもたらすらしい。
 僕は遥か彼方から吹き抜けてくる風を受け止め、雄大な時空に触れる。
 その広さはやはり果てを感じることが出来ない。
 太平洋というこの海の向こうには北米や南米大陸があるらしいし、少し方角をずらすとミクロネシアという地域があって小さな島々が点在しているらしい。だが、残念ながらここで受ける風からはその場所まで辿ることは出来ない。晴眼者達が遠いものは見えないと言うように、僕も遠いところまでは辿れない。
 人が僕に見えていると思っているものも、実際には何も見えていない。ましてや人の心など決して読めない。誰にも僕の心が理解出来ないように。
 僕ならここにいる。見えているのなら尚更わかるはずだ。僕は今ここにいる。誰かの為でもなければ、自分の為でもない。ただここにこの心と共に生きて、この盲目の海を泳いでいる。
 僕には心しかわからない。心だけでしか判断出来ない。優しい心や優しくない心。格好良い心や格好良くない心。ただそこにあるものをあるがままに感じる。
 僕が立ち止まる時、僕の目の前には無限に何もない。そして特別に与えられたこの無限の概念を存分に使い、あらゆるものを創造する。
 出会い、言葉を交わしてきた人達、草花や木々、一滴の水に至るまで全てを創造する。
 
 僕はこの世に一人で生まれ、一人残された。未だかつて誰の姿も見たことがない。
 
 僕が立ち止まった時、僕の目の前には無限に何もない。上下左右、前も後ろも、過去も未来も本当も嘘も。
 ただただ無限の世界が眼前に広がる。