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アガペー 〜あるAV女優へ〜 (後編)

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「もしよければ、新しいコーヒーを淹れにいきませんか?」と小野は言った。
 うららは微笑みながら頷き、携帯電話を手に取って立ち上がった。 
「今日は随分空いてますね。禁煙エリアはもうかなりの時間、僕達だけですもんね」
「そうだったんですね。話してるのに夢中で気付きませんでした」うららは店内を見渡しながら答えた。
「周りにあまり人がいない方が話しやすいですもんね。タイミングが良かったです」と小野は言った。
「そうですね。でも小野さんには感謝しています」うららは困ったような顔をして、申し訳なさそうにつぶやいた。 
「いえいえ、僕は何もしてませんから。またアイスコーヒーで大丈夫ですか?」
「あ、はい、ありがとうございます」
 小野は先に席に戻り、うららは途中で立ち止まったまま携帯のメールを打っていた。

 窓の外はすっかり暗くなっていた。
 数時間程度ではあれ、自分達以外に誰もいない限定的で奇妙な空間を小野はぼんやりと眺めていた。
 数名のウェイトレスは喫煙エリアと厨房の往復で忙しく動き回っている。
 広い空間にうららが一人佇んでいると、曲がりなりにも連れ合いとして来てる小野は少しだけ優雅な気分にさせられた。
 うららは背の高い女性で、身長百七十三センチの小野とさほど変わりはなく、マメにエステに通って肌やプロポーションにはかなり気を使っているというだけあって、実年齢よりは遥かに若く見えたし、スタイルもかなり良かった。まるでモデルのような出で立ちの女性だ。
 高級店という部類のソープランドで働いてるらしく、店の女の子達の中では年齢が断トツで一番上なんだと笑いながら教えてくれた。
 おしゃれで気を使うのはサングラスだけで、洋服やバッグ等には全くお金を掛けないらしい。現に今日も紺色のトレーナーとジーンズというシンプル極まりない格好で、コーディネイトもへったくれもないといった感じだった。