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アガペー 〜あるAV女優へ〜 (前編)

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 聖書は一度だけざっと目を通したきりです。
 覚醒剤をやりながらでしたので、集中して、連続して読み耽ることが出来ました。
 でももし覚醒剤のせいで私の解釈が歪んでしまっていたとしても、それを正そうとは思いません。
 私が受け取ったメッセージは唯一無二のオリジナルで構わないと思っています。
 その印象が全てだと、神はおっしゃってくれると思うんです。

 覚醒剤との出会いは決して私から歩み寄ったものではありませんでした。
 二十才になる前、十九才の頃ですから今からもう十二年も前の事ですね。
 私にとってはその時が一番最初、この世の始まりでした。
 点睛を授かった龍がその活動を開始するように、すでに等身大で描かれてあった私の総身の絵画は、魂を置き去りにして離脱し、私の元に未来を運んでくるようになった。
 私は閉じ込められたように何もすることが出来ず、動きを止めたまま、心の中でしくしく泣いていました。
 しかし未来は一つしかありませんから、私はそれを受け取るのみです。
 逃れたくても逃れられない無情の部屋で、与えられた未来を細々と咀嚼する。
 それからは、それまで感じたことのない、言うなれば純度の高い上質な不安を常に感じていたのです。
 私はその時に初めて自らの心の豊富な領地に罪を区画しました。
 私はその時に初めて自らの心の永遠の太陽に夜を与えました。
 その時に初めて自らの心の従順な飼犬に鎖を繋いだのです。
 
 裏切りに怯え始めた弱者は自分の罪とは対峙しようともせず、償おうともしません。
 償われるべき罪はやがて体内で醜く肥大していき、顔相にその姿がはみ出してくる。
 そして卑しく人権を主張し始めるんです。 
 理想はいつだって、この世界に果てを区別せず、空は宇宙に向かって溶けてゆく、どこまでも自由な、全てで一つの世界です。
 でも残念ながら区切られてばかりの現実世界ですよね。