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アガペー 〜あるAV女優へ〜 (前編)

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    五 奇妙な暗闇

(ピピピピ……ピピピピ……)
 携帯のアラーム……。頭がボーッとする。数回瞬きをして状況を把握する。
 あたりはもうすっかり闇だ。
 携帯の切ボタンを押してアラームを消す。
 ゆっくりと上体を起こし、勇十赤を確認する。
 すると、彼の周りだけが暗闇のカーテンを引かれたように、すっぽりと隔離されていることに気が付いた。
 国道沿いに等間隔で立ち並ぶ電灯は一箇所だけ球切れを起こしていて、彼の周り一帯に闇を覆い被せていた。
 さっきは全く気付かなかったな……。
 すぐに車を降りようとも思ったが、しばらく様子を見て勇十赤の出方を窺う。
 彼の聴力ならば今のアラーム音は耳に届いているはずだ。
 こちらに向かって何かしらの合図を送ってくるだろう。
 前方の闇を剥いで目を凝らしてみた。

 勇十赤は相変わらず瞑想に耽っている。
 小刻みに体を揺らしてはいるが、寒さに震えている様子ではない。
 とりあえずは良好なようだ。奇妙な闇の中にすっぽり収まっていること以外、特別な変化もなさそうだ。
 望み通りに瞑想が出来ているようだし、辺りの静けさもありがたいに違いない。
 だが、それにしても奇妙な闇だ。
 彼の頭上の電灯は、あたかも自分の意思で消したのではないかとさえ思えてしまう。
 偶然というよりかは、恣意的な闇。
 まるでその場所だけが、勇十赤のためにお膳立てされたような、何かと結託してこしらえたようなある種の不気味さを感じずにはいられないからだ。
 闇に隠れることによって周りからの注意をはぐらかし、より深い瞑想を得る格好の場所を確保するために、念力のようなものを使ったのか、はたまた魔法のような何かか……。
 などと。