D.o.A. ep.17~33
唐突に現れ、地獄のような殺戮をくりかえした白い獣は、その去り方も唐突だった。
ある時不意に動きを止めると、耳がおかしくなるような咆哮をあげ、そして、ふたたび浮上した。
白い獣をつつんでいた輝きが増し、輪郭だけになったその直後、まるでそこにいたのが嘘みたいに、消滅した。
あとには何も残らない。
だが、それが夢やまぼろしではなかったことは、荒野と化した大地に刻まれた、むごたらしい爪痕が教えてくれる。
虫のごとく追い立てられる一時はようやく過ぎ去った。
けれど、終わったからといって、オークとの闘争が再開されることはなかった。
あの怪物は、もちろん、オーク軍団と同じ勢力に属していたはずだ。
しかし、味方でも仲間でもなかった。
あまりに無秩序で分別無い、圧倒的な暴力を目の当たりにし、双方から戦意はほぼ失われていたのである。
小さな小競り合いが少しあった程度で、大きな力のぶつかり合いはなく、日が暮れ、夜になって、夜が明けた。
そんなことが三度ほど繰り返した朝、総司令部へ、大本営より、伝令がたどり着いた。
ラドフォードは、みなの視線をあつめながら、その報せを紐解いてゆく。
彼の暗かった表情が、目に見えてより一層青褪め、やり場のない感情が書を広げる手を震わせた。
――――夕刻、ロノア王国の全面降伏が、全軍に通達されることになった。
作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har