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D.o.A. ep.17~33

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「―――! おい、あれ、見てみろ」

突然、誰かがあっとさけんだので、つんのめりかけた。
彼は空を指していたので、つられて見やった。
天空があらぬ色に染まっただけでも十二分な怪異である。
であるのに。

「空が、 …割れる」

その天が、まるでガラス製であるかのように少しずつひび割れだした。
ガラスというより、たまごのような印象すらあった。
もうすぐ何かが生まれそうなたまご。
生まれてくるために、中の生き物が一生懸命、殻をこわしている。
黒い殻をつき破って、なにかが出てくる。
なにかが。
なにか、おそろしいものが。

釣り下がっていたシャンデリアが床に叩き落されたような大音量に、オークさえもが、一斉に天を仰いだ。
黒い空が砕け散って、空はもとの澄んだ蒼い色に変わる。
そのことは同時に、「それ」が、殻の中から解き放たれたことを意味した。

雪より白い、見たこともないほど、大きくてうつくしい獣だった。
ぼんやり白銀に発光して、ぱりぱりと電気のようなものをまといながら、ゆっくりゆっくり、高度を下げていった。
翼もないのに、白い獣は静かに浮いている。
絵に描いた以上の、光景の幻想性に魅せられ、誰もが釘でも打たれたかのように、目をはずせない。
神々しくもあり、悪魔のように不吉でもある。
なによりもうつくしく、かつなによりもおぞましい。
この世のものとは思えぬ、矛盾だらけの存在を直視する無数の双眸の色は、陶酔に近かった。

「……三超獣(トライディザスター)だ」
「えっ…?」

この日、かつてない災厄そのものが、そのうつくしい獣のかたちを得て降臨した。



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作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har