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D.o.A. ep.17~33

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「あれ?リノンさんじゃないですか?」

「…ん、ほほあひゃん、んぐっ、あなたもお昼ご飯…以外ないか」
皿大盛りの飯をかき込んでいたリノンが声の主・ロロナに反応し、食器を置く。
この軍の食堂は、軍人ならば階級問わず無料で好きなだけ(さすがに限度はあるが)食べることができ、薄給の兵の心強い味方だ。
味もよく、メニューも豊富で、特に人気なのが、今リノンが平らげんとしているカレーライスだった。
飯もルーも己でよそえるので、健啖家ぞろいの兵士らは、当然といわんばかりに皿からあふれるほど盛り、ひどい者はそんな調子で何度もおかわりをするため、競争率もはげしい。
「人気ナンバーワンのメニューですね。お隣いいですか?」
「どうぞどーぞ。休みっていいわよね、みんな自分ち帰っちゃって、競争率低くなるし」
言って食事を再開する。いつもは人でごった返す食堂には空席を見つけられた。それでも人は多い。
ロロナはぼんやりとあたりを眺めていたが、ふとリノンの傍らにある書物の存在に気付いた。
「ところで、ロロナちゃん家帰んないの?」
「あたし、軍人になること、反対されてますから…帰りづらくて」
「ふーん、そう?でも親なんていつまでもいてくれるわけじゃないし、もっと会っとけばよかったって後悔しないようにね。
…いや、私は親、顔も知らないから、よくわかんないけど」
すこし説教ぶったことを言った自分に照れ、リノンは苦笑いしつつカレーを口に運ぶ。
「あの、さっきから気になってたんですけど。その本は?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた。これはねぇ、私の価値をより高めるためのものです」
「は、はあ…。価値ですか」
「ありていにいうと、参考書」
おもむろに本を持ち上げると、ロロナに手渡してやる。見てみろということらしい。お言葉に甘えてめくってみた。
内容はよく理解できないが、何についての本であるかはかろうじてよみとることができた。
「解毒の魔術…」
「うん、解毒魔術。ま、さすがに先日くらったようなのに対処するのは難しいけど。
死にかけて痛感したの。やっぱり毒矢とかって、てっとり早く相手を無力化できる攻撃手段でしょ。
傷を治せても、刃に塗られた毒を消さなきゃ戦えやしないし、運が悪ければ死にいたるわ。そういうの、悔しいじゃない」
そのように感じていたところ、ちょうど解毒術士の資格試験の紹介を見つけたという。矢のごとき勢いで申し込み、今猛勉強中とのことだった。
「これでもっとみんなの役に立てればいいなーと。そのようにおもったわけです」
カラン、とかわいた音を立てて、スプーンが皿の上に落ちる。

「いい、ですね。…ほんとうに」
あっけらかんと明るいリノンと対照的に、ロロナの声色はどこか薄暗い。

作品名:D.o.A. ep.17~33 作家名:har