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杉が怒った

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第10章 終息



豊田はテレビのニュースや週刊誌の見出し、インターネットの投稿など、尾高山に関することを注意して見ていたが、あれ以来何の変化も見られなかった。

もう一度尾高山に登ってみようと豊田は思った。その前にトンネル工事現場も見たかった。そう考えて、まず登山口ではない裏側の工事現場付近までバスを利用して近づいた。

あれっ、休日なのに工事が行われている。豊田は、遅れを取り戻そうとしてるのだろうと思った。そして、特別な警戒はして無さそうに見えた。もう作業員の不調は治って、あの原因も分かったのだろうか。もし、あの赤い花粉が原因だとしたら、毒性はそれほど強くなかったのかも知れない。豊田は遠回りして、徐々に自分が赤い杉花粉を見た場所に近づいて行った。

杉の林が見えた。切り倒され横たわっている杉の木もそのままで、残っている杉の中からあの赤い花粉をつけた木を探そうとした。無い! そろそろ花粉の飛ぶ季節も終わりかけているのだろう。黄色く見える所も少なくなっている。

ん? 豊田は最近切り倒されたと思える木と切り株を見つけた。記憶を辿ると、あの赤い花粉をつけた木のような気がする。ということは、何者かが、勿論組織だろうが、あれが毒を飛ばしたことを確認したということだろう。誰? 豊田は、色々と考えて見る。行き着く所は当然道路を造ろうとしている官庁、政府に行き着く。

もうすでに、あの作業員達の不調は無かったことにされているか、食中毒ということにされているのかも知れない。もしかしたら、自分のことも調べ上げられているかも知れないと想像して、急に寒気を覚えた。

豊田は、水分を補給し、尾高山頂上に向かった。あまり人の通らないコースだが、後ろから誰かの歩く音がする。


作品名:杉が怒った 作家名:伊達梁川