杉が怒った
マナーモードにしている携帯が震えている。日野は考えのまとまらないままに、通話ボタンを押し耳に当てた。
「日野様、手荒なことをいたしまして申し訳ありませんでした。すべて順調に進行いたしており、もう何の心配もございません。今まで見聞き致しましたことはすっかり忘れて、研究生活に戻られることを願っております。いずれ大学学長より指示が出ると思います。念のために暫くの間監視をつけさせて貰いますが、全く日常の行動に迷惑をおかけすることはいたしません。安心してお過ごし下さい」
一方的にバカ丁寧に話す相手の言葉を聞きながら、日野はまだ夢の中にいるような気分でいた。