杉が怒った
一般公開の林があって、訪問者もあるのだが平日の今は誰もいないようだ。展示室の係員もヒマを持てあまして外に出ているかも知れない。日野は音をたてる物を探した。スリッパを履いているのに気付き、気付いてくれと祈りながらそれで床を叩いた。
「どうしました?」
気付いてくれた……と、日野は、ほっとしてそのまま横になって眠ってしまいたい気分だった。「しゃだん」と言うのもだるかった。しかし自分を励ますように気合いをいれて「研究室が危ない。電源を切って下さい」と言った。
係員は、ことの重大さがいくらかは解ったようで、「はい研究室ですね」とすぐ、行こうとした。日野は、まだ思考力はあった。研究室に行くのは危険だった。
「ここの……全ての……電源」と、残っている全てのエネルギーを使い果たすように言って、仰向けになった。
「ああ、どうすれば」と係員は悩んだようだったが、「そうだ、ブレーカー」と呟いて行動に移した。