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【HP過去作】 SHAZNA神社 【2002年(17歳)】

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短編小説 シャズナ神社 後編



(前回のあらすじ)
2010年、ごく普通の中学生カズラ、キヨミ、ミチオの三人は
20世紀の凶悪犯が祭られているという施設「SHAZNA神社」
にやってくる。しかし、ミチオが突然、姿を消してしまった。


「な、なにこれ!信じらんない!」
キヨミがヒステリックに喚き散らす。
しかし、これが現実だと言わんばかりに、足元では、
『すみれSEPTEMBER LOVE』という謎の文章が自己主張を続ける。
「おい・・・キヨミ、これ見ろよ。
この『すみれSEPTEMBER LOVE』って書き置き、続きがあるぞ」
それだけではない。『すみれSEPTEMBER LOVE』は、
始まりでもなかった。二人がゆっくりとその文章の数メートル前を
目で追うと・・・

『Melty Love』

「メルティラヴ・・・!」
二人が顔を見合わせる。
「爆弾の名前・・・」
それ以後、良く見ると10メートル程おきに
謎の文章は地面に記載されているのだった。
「・・・どうする、キヨミ、この文章の羅列を追っていけば、
おそらくミチオに辿り着く。しかし、同時に・・・」
「凶悪犯の亡霊にご対面って訳でしょ。解るわよ、
その流れぐらい。ヤバそうな匂いがプンプンするもん」
「俺はミチオを助けに行く。お前は・・・」
「行くって。もう乗りかかった船よ」
「しかし・・・」
「カズラ、私の目は開いてる」
「・・・」
「この眼がここにある限り、私は真実を見極める
必要があるの。例えそれが概念レベルでも」
「・・・途中下車は厳禁だからな」
それで俺達は文章の羅列を追うことにした。

3番目の文章。
『White Silent Night』

4番目の文章。
『SWEET HEART MEMORY』

5番目の文章。
『PURENESS』

「全く意味の解らない文章が続くな。
ホワイトサイレントナイト・・・白い沈黙の夜・・・
スウィートハートメモリー・・・甘い心の記憶・・・
何かの暗号なのか・・・?俺達に何かを伝えようとして・・・?」
「あっ、見て!6番目の文章からは、あの社の中に
続いてる・・・」
二人は今更進退を確かめ合う程愚かでも無かった。
社の中は薄暗く、しかし、蜘蛛の巣も張っていない所を
見ると、誰かが頻繁に出入りしている様子だった。

6番目の怪文章。
『Love is Alive』

7番目の文章。
『恋人』

8番目の文章。
『Pink』

「おい、だんだん適当になってきたぞ」
「・・・倦怠期・・・」
「え?なんだって?」
「ねぇカズラ、もしかして、これって、
なんかのディスコグラフィー・・・みたいな物じゃない?」
「まさか!」

9th
『Piece of Love』
10th
『Tokyo Ballet Reprise』

「まさか・・・まさかな」

11th
『AQUA』
12th
『Winter's Review』

「これで、終わりか・・・ん?
日付が入ってる・・・1999/12/8。
これがSHAZNA最後のシングルとなった・・・」
「・・・本当にディスコグラフィー?」
「・・・みたい」
その時、二人は社の隅、暗がりに見慣れた顔を見つけた。
「・・・ミチオ!」
「ミチオ君!」
社の奥、ミチオは仰向けに倒れていた。
「よかった。外傷は無い。気絶してるだけみたいだ・・・」
ただ、一つだけさっきと明らかに違う事があった。
ミチオは、何も穿いていなかった。
「うわっ!こ、こいつ、すげぇ・・・信じられねぇ・・・
俺、男として、敗北感を感じるよ・・・って、おい、キヨミ、
お前、何してんだ!」
「写メール」
「・・・・・・許す」
「おい、お前ら!」
低い声が二人の頭上に投げつけられる。
見上げる二人が見たものは、
巨大な男が化粧をして腕組みをしている様だった。
「お・・・オカマ・・・」
「誰だ、お前!」
「俺は、IZAMだ」
「・・・(カズラ、知ってる?というポーズ)」
「・・・(キヨミ、知らない、というポーズ)」
「SHAZNAのボーカルだ」
「・・・!!まさか・・・『ヴィジュアルの乱』の主犯か?」
「黙れ!どいつもこいつも馬鹿にしやがって・・・
俺は・・・IZAMだ・・・俺は・・・IZAMだ・・・名前を呼べ・・・」
「SHAZNAのボーカル!お前は死刑になったんだよ!
勝手に生き返るんじゃねぇ!」
「ふっ・・・それは違う。確かに裁判で、俺は死刑を宣告された。
しかし、警察の野郎は重大なミスを犯していた。
刑を執行されたのは俺じゃない。ギターのAOI君だ」
「な、なんだって!?」
「サツの連中は俺を連行しに来た時、間違えてAOI君を
しょっぴいてった。SHAZNAの集合写真を見て・・・
どれが俺だか解らなかったんだよ・・・へっ。
あの時だけは、人々から忘れられてて良かったと思ったよ」
「そんな・・・そんなバカな!
まさか・・・崇りってのも・・・」
「崇りなんかある訳無い。当然、生き残った俺がこっそり
『ミュージックステーション』の生放送中に後ろからタモさんを
殴ったり、『ポップジャム』の収録中にライトを天井から
落としたりしてたんだよ・・・面白い位ヤツラ怖がってたな」
「ふざけんじゃねぇ!何が楽しいんだよ!そんな陰気な事して!」
「陰気・・・だと?」
IZAMは軽々と片手でカズラの首筋を掴むと、
高々と持ち上げた。
「お前に解るか・・・!
人々に顔を忘れ去られた男の苦しみが!ああ!?」
「く、苦しい・・・」
「俺は・・・爆弾事件を起こせば・・・世間の奴らは
俺の顔を思い出すと思った・・・でも違った・・・
畜生!AOIじゃなくて・・・
AOIじゃなくて俺が死ぬはずだったんだよぉぉぉぉ!!!
「か・・・か・・・」
カズラの顔色が赤から青に変わり始めた。
「やめろおおお!この変態ヤロォ!」
キヨミが落ちていた鉄パイプを持って殴りかかる。
一瞬の金属音。
「あ・・・あ・・・」
鉄パイプの先端はIZAMと名乗る男の側頭部に
突き刺さっていた。
「こ・・・殺しちゃっ・・・」
その瞬間、IZAMの眼は残忍な猛獣のように鋭く剥かれた。
「・・・終わりか?」
「えっ!!?」
「こざかしいわ、くそガキどもが!」
「きゃあっ!!」
一蹴されたキヨミがゴムマリのように
壁に叩き付けられる。
「馬鹿な・・・人間離れ・・・しすぎてる・・・」
「こわっぱどもめ・・・俺を怒らせるとどうなるか・・・
見てろよ!次の国会の日、俺は新型のメルティラヴを
議事堂に仕掛ける!今度こそ、世の中の連中は俺の名前を
完全に脳裏に刻み付けるんだあああっ!!」
「完全にイカれて・・やがる・・・」
その時だった。
「ううん・・・」
隅で倒れていたミチオの意識が戻った。
「なんだ・・・これ・・・目覚まし時計か・・・?」
ミチオの視界に不思議な形の機械が映った。
寝起きで意識の定まらないミチオが傍に在った機械を
壁に向かって投げ付けると、棒状のメカは粉々になって散らばった。
「ボン!」
突然、カズラの首を掴むIZAMの力が緩んだ。
「うわあっ!!」
糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちるカズラ。
「ボン!バン!バチバチ・・・
あり・・あり・・・がとござました・・・