おひなさま
救急車が到着すると、通行の人らが家の中を興味深げに覗き込んでこそこそと囁き合っていた。
店のもんは心配して声をかけてくれるが、何を言ってんのんか分からない。お父ちゃんはおろおろしてるばかり。
救急の人を部屋に案内すると、毛布で体を包み担架に乗せて車に運んだ。
救急車の中に一緒に入った私は、貴子の体質やかかりつけ医やいろいろなことを聞かれてじれったかったけど、その間に病院と連絡を取り、受け入れ態勢を整えてくれた。
呼吸はすでに浅く間隔があいてきている。握っている手は、氷のように冷たかった。
私ひとりが救急車に乗って付き添って行った。
「貴子! しっかりシィや・・・」
病院の集中治療室で輸液をつなぎ、聴診器を当て、瞼を返したり瞳に光を当てていた医者はゆっくりと首を、横に振った。
「ウそ! うそうそ・・うソやゆうテぇ――――!」